TDKオーケストラコンサート2015

スペシャルインタビュー
アリス=紗良・オット(ピアノ)

アリス=紗良・オット(ピアノ)

チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番の解釈

―― 今度のTDKオーケストラコンサートではチャイコフスキーのピアノ協奏曲を演奏していただきます。作曲家が作った音楽を実際に表現されるのは、アリスさんをはじめピアニストなど演奏者の方々ですが、表現の仕方、曲の解釈の仕方が変わるきっかけなどはありますか。

アリス: 私もかれこれ10年間はこの曲を弾いています。本当に長いおつきあいなので、たぶん80回以上は弾いていると思います。弾き過ぎてしまうと、ちょっと距離感が欲しいなと思って、実はずっと避けていた曲なんですけれど、久々に弾くことになります。
17歳の時に日本で初めて弾いた後、キエフ国立フィルハーモニーと共演させてもらったんですけど、そのコンサートにちょうど日本大使がいらしていて、次の日キエフから250キロ離れたカミアンカという小さな村に連れて行ってくれたんです。その村にチャイコフスキーの妹さんのサマーハウスがあって、チャイコフスキー自身が使用したピアノが置いてあるんです。ちょっと弾かせていただいたんですけど、3楽章の出だしを弾いていたら館長さんが来て、「実はこれはウクライナ民謡なんだよ」って言って、歌ってくれたんです。歌詞も教えてくれたんですが、春を呼ぶ歌で、どちらかというとメランコリックな民謡なんです。3楽章のイメージとしては、すごく勢いよく始まるんですけど、それを知ってからは、曲を見る目も変わってきました。
それに、10年間弾いているといろんな指揮者やオーケストラとの出会いがあって、いろんなことを勉強して、解釈がだんだん変わってきました。7年前か6年前に既に日本でピアノコンチェルトを聴いて下さったお客さまが今回もいらしてくれたら、7年間の解釈の変化を聴いていただけるんじゃないかなと思います。

アリス=紗良・オット(ピアノ)
フランクフルト放送交響楽団

―― 一緒に組んでいるオーケストラや、音楽そのもの、それこそオリジンを知るとまた深まって曲の解釈が変わっていくのでしょうか。

アリス: 変わります。それに、それぞれ音楽家はみんな、自分の解釈というのを持っています。そして、ライブというのは、ピアノも含め楽器が毎回違うし、オーケストラもコンディションが毎回違うし、お客さんも違うし、音響も違います。そのなかでその場に一番ふさわしい音、音色を見つけていくのが、私たち音楽家の役目なんです。そうすると、リハーサルと本番とでは全然違う曲になりますし、それはその後の曲の弾き方にも影響してきます。そうやって、曲というのは常に変わっています。

―― 一緒に曲を作り上げているオーケストラの存在というのは、アリスさんにとって、どのような存在になりますか。

アリス: 音楽のように大事な大事な部分です。でも、オーケストラだけでなく、お客様もそれぐらい大事な部分なんです。お客様がいなければ音楽は成り立たないし、コンチェルトの場合はオーケストラもいなければならない。私にとってコンチェルトというのは、ピアノと伴奏ではなく室内楽なんです。みんなで一緒に音を作り上げていく、というような。音楽でのコミュニケーションというのは、私にとって一番幸せな時間です。みんなで一体になるのが一番、音楽での理想なのかなと思います。

フランクフルト放送交響楽団
アリス=紗良・オット(ピアノ)

音楽を通してポジティブな気持ちを分かち合いたい

―― こんな事をかなえたい、という夢はありますか。

アリス: このオーケストラと弾きたい、このホールで弾きたい、というのはたくさんあります。でも今はまだいろいろなことを勉強しなくてはいけないので、今後の5年、10年が大きな挑戦だと思いますし、5年後、10年後にまだ舞台に居て、音楽を通してお客さまと分かち合うことができたたらな、と思います。それと10年経っても、朝起きて「自分は幸せだな」というのを感じたい、と思います。日本の祖母に「自分が幸せでなければ、他の人も幸せにできない」と言われてきましたが、音楽では愛情とか幸せとか、そういうポジティブな気持ちをひとと分かち合うことがすごく大事だと思います。

アリス=紗良・オット(ピアノ)

―― 本日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。

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