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トップメッセージ

「Social Value」の向上を通じ、
持続可能な社会と
企業の成長を実現します

代表取締役社長石黒 成直

TDKは、DXとEXによる社会の変革の波を確実に捉え、「創造により文化、産業に貢献」していくことで、持続的な企業価値向上を実現していきます。

持続性を支える「仕組み」をつくり上げるために

TDKの未来は、80年前に先人が示唆していました。

2016年6月の社長就任以来、私はTDKを持続的に発展し続ける企業とするためには、何をなすべきかを考え続けてきました。過去3年間を振り返ると、連結売上高は史上最高を毎期更新、営業利益は2019年3月期に1,000億円の大台に乗り*、ROE(株主資本利益率)も10%目前となるなど、経営効率も着実に改善してきました。このように各会計年度の業績面では、確かな成長をお示しすることができています。しかし、企業としてサステナビリティを実現するためには、その時々の外的・内的経営環境に柔軟に対応し、成長し続ける仕組みをつくり上げる必要があり、それがステークホルダーの皆様に対し、私が果たすべき責務でもありました。考えを巡らせていた私がまず答えを求めたのは、「TDKはなぜ80年もの成長の歴史を刻むことができたのか」という問いでした。
磁性材料「フェライト」の工業化を目的に1935年に設立されたTDKは、セラミックコンデンサをはじめとする様々な受動部品やマグネットなどを世に送り出し、世界のエレクトロニクス産業の発展に貢献してきました。独自の磁性材料技術を基盤とした磁気テープやHDD用磁気ヘッドで力強い成長を実現した一方、M&AによってSAWフィルタなどの高周波部品やリチウムポリマー電池というけん引役を生み出しました。近年では、受動部品やリチウムポリマー電池、各種センサなどを柱に、未来のTDKを形作ろうとしています。新たな事業を取り込む裏側では、事業撤退とそれに伴う売却資金の活用も行ってきました。たとえば、1990年代には半導体子会社を売却し、回収したキャッシュをHDD用磁気ヘッド事業の強化に投じ、近年のセンサ事業への積極投資には、高周波部品事業のカーブアウトに伴う資金を活用しました。資金の活用だけではありません。2000年代に事業譲渡した記録メディアの塗布技術は、リチウムポリマー電池や機能性フィルムなどに応用しました。このように、TDKはM&Aと事業撤退によって絶え間なく事業構造の変革を繰り返してきました。
そうした変革に乗り出す際に判断軸とすべきことは何かを思案していた私は、ある時ふと目線を上げた先に掲げられていた「社是」に、その答えを見出しました。それは創業者をはじめ、歴代の諸先輩と価値観を共有できた瞬間でもありました。

*営業利益は2017年3月期計上の事業譲渡益を除いたベースで比較

TDKがグローバルに共有すべき価値観

「社会に貢献できるか」、「それを技術で形にできるか」が価値基準です。

創業者である齋藤憲三は、「社会の発展に貢献したい」という想いを一途に抱き続けた真の起業家でした。彼は、「きっと世の中の役に立つ」という信念で、当時まだ用途が存在しなかったフェライトの可能性に挑んでいきました。「社会的に価値があるという強い自覚と、いかなる困難に直面しても決して諦めないという情熱を持って取り組めば、必ず道は開けてきた」と彼は後に回想しています。そうした経営哲学が表れているのが、社是「創造によって文化、産業に貢献する」であり、社訓「夢 勇気 信頼」です。「社会に技術で貢献する」という夢が、TDKの原動力だったのです。
私は、これからTDKが前に進むにあたっても、約80年前に先人が示唆していたように、「社会に貢献できるか」、そして「それを我々の技術で形にできるか」を価値基準とすべきであるという結論に達しました。たとえば、これまでTDKは医療分野では積極的に事業を展開していませんでしたが、予防や治療、健康管理においてエレクトロニクスが貢献できる領域は広がっており、TDKがそこでお役に立てるのであれば、事業展開を行わない理由はありません。
未来へ前進していく上で、もう一つ大切にしたい判断軸は、TDKが培ってきたコアテクノロジーを活かすことができるかどうかです。たとえば、フェライトを源流とする磁性技術の蓄積があったからこそ、HDD用磁気ヘッド事業への参入も可能になったように、素材技術や、素材の特性を最大限に引き出すプロセス技術といったコアテクノロジーを駆使することで、広範な製品群からなる盤石な土台を築くことができたのです。創業以来の「モノづくり」を磨き続けていくことも、TDKが社会に価値を持続的に提供していく上で欠かせないと考えています。
2018年5月に公表した中期経営計画「Value Creation 2020」(2019年3月期から2021年3月期まで)のコンセプト図では、「社会に貢献できるか」、「それを我々の技術で形にできるか」という価値基準に従い、マーケットインによる「コトづくり」発想を起点とし、「モノづくり」でそれを形にしていく考えを示しました。「コトづくり」と「モノづくり」が相互に高め合う好循環によって、社会に対し高い付加価値を提供し続けていきたいと考えています。

持続的企業価値拡大の推進力

社会的価値の創造を推進力として前進していきます。

「Value Creation 2020」では、「Social Value(社会的価値)」、「Commercial Value(成長戦略)」、「Asset Value(資本効率)」を、企業価値を形成する要素としてそれぞれに目標を設定し、価値の最大化に努めています。社会的価値がTDKのサステナビリティの推進力であると考え、これら3要素の頂点に「Social Value」を置いています。持続可能な社会への貢献を追求し、その結果として「Commercial Value」、「Asset Value」が増大し、「Social Value」のさらなる創造に繋がるサイクルを永続的に回す仕組みを、TDKグループ全体に浸透させていきます。
2019年には、「サステナビリティビジョン」を策定しました。その中で、TDKは「独自のコアテクノロジーとソリューションの提供により、すべての人々にとって持続可能で幸福な社会を実現する」ことを宣言しています。「幸福」という言葉には、TDKの技術で人々を幸せにし、次の世代に地球を健全なまま手渡したいという想いを込めており、その遂行を通じ、SDGs(持続可能な開発目標)にも貢献したいと考えています。

「Value Creation2020」の考え方

DXとEXの進展により果てしなく広がる市場

あらゆる市場で社会的価値を提供していくことができます。

これまで様々なデジタル化の進展によってビジネスやライフスタイルが変わってきたように、IoTやAIの著しい発展は、情報伝達のあり方や産業の形を大きく変えてきています。一方、産業革命以降、人々は化石燃料の利用で暮らしを豊かにしてきましたが、地球温暖化や化石燃料の枯渇といった問題が深刻化する中、従来とは異なる新たなエネルギー社会の確立が不可避となっています。こうしたDX(デジタルトランスフォーメーション)とEX(エネルギートランスフォーメーション)という大きな潮流は、エレクトロニクス抜きに語ることはできません。これらの進展に伴って、TDKが技術とソリューションで貢献できる市場は広がっていくと確信しています。たとえばDXでは、デジタルデータを活用したモノづくりの最適化を通じ、エネルギーや資源ロスの削減や、「ゼロディフェクト(不良品ゼロ)」を実現し、社会に価値を還元することができます。またEXでは、電気と磁気によるエネルギー変換効率の向上を通じて、社会のお役に立つことができます。
TDKの前には、独自技術・製品の強みを活かすことによって社会課題の解決に貢献できる市場が果てしなく広がっているのです。

社会的価値を提供する実力

磨き上げてきた技術力、開発力、モノづくり力があります。

「そうしたビジネスチャンスを掴む実力がTDKにあるか」と問われれば、私は「あります」と答えます。
センサや電源、ICT関連で活躍する多種多様な電子部品、そして電子機器の小型化やモジュール化に貢献するIC内蔵基板「SESUB(Semiconductor Embedded Substrate)」など、DXを支える幅広い製品と技術をTDKは有しています。たとえば、センサに関しては、磁性技術を応用した磁気センサ、MEMS技術によるジャイロ、加速度、慣性、超音波センサ、そして温度・圧力センサなど、非光学式センサでは世界トップクラスの豊富な製品をラインアップしています。信号を処理するIC技術やソフトウェア技術も含めた総合的なセンサソリューションを、自動車、ICT、産業機器・エネルギー市場で提供していくことが可能です。自動車市場向けにおいては、各種センサに加え、DC-DCコンバータをはじめとする電源デバイス、駆動モータ用のネオジムマグネット、ECU(電子制御装置)用の車載品質のMLCC(積層セラミックチップコンデンサ)など、数多くの製品と技術で、xEV(HEV/PHEV/EVなど)、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転の普及に貢献していくことができます。また、日本では2020年から5G(第5世代移動通信システム)のサービスがスタートしますが、当社が高周波部品でカーブアウトしたのはSAW/BAWフィルタのみで、その他の高周波部品を含む多くの製品と技術で5Gに貢献することができます。
EXにおいても、創業以来培ってきた素材技術を幅広く応用展開しています。たとえば、エネルギーを「創る」シーンにおいては、風力発電機用の大型ネオジムマグネットやフィルム太陽電池、エネルギーを「変換する」シーンにおいては、AC-DCスイッチング電源やDC-DCコンバータ、エネルギーを効率よく「供給する」シーンにおいては、電磁誘導方式および磁界共鳴方式のワイヤレス給電システム、そして、エネルギーを「蓄える」シーンにおいては、リチウムポリマー電池など、エネルギーに関わる多くのシーンで、TDKの製品や技術が活躍しています。とりわけ、リチウムポリマー電池においては、圧倒的な競争力を誇るAmperex Technology Limited(以下、ATL社)の「First-to-Market」の成功モデルを水平展開しながら、小型電子機器やウェアラブル機器向けのミニセルや、ドローン、電動二輪車、家庭用蓄電システム向けのパワーセルの開拓を進めています。
モノづくりの面でも「実力はあります」と答えます。今後、事業展開を強化していく自動車や医療分野などにおいて、ひとたび製品に不具合が生じれば、人命を危機にさらし、TDKの企業価値にも甚大な影響を及ぼす恐れがあります。そのため、3年ほど前より、「インダストリ4.0」に「ゼロディフェクト(不良品ゼロ)」の追求を加えた「モノづくり改革」を進めてきました。「最終検査で品質は保証できない!」という品質方針のもと、すべての製造工程で品質を管理し、不良品を作らない生産ラインを実現することを目指しています。こうした考え方は、社内で「Arubeki Sugata(あるべき姿)」というグローバル共通の思想として浸透しています。2017年4月には、現場に立脚したあるべき姿のモノづくりを具現化するために、IoT、AI、ロボティクスを駆使したモデルラインが秋田県の稲倉工場東サイトで稼働を始めました。今後は世界中に展開し、どの工場でも同品質の製品を生産できる「ロケーションフリー」を追求していきます。

成功し続けるための組織づくり

グローバルかつ多様にして、しなやかで強靭な組織を創り上げていきます。

短期的なリスクは主に外部環境に関するものですが、中長期的な視座で見た場合、リスクはTDK自身にも内在しています。DXの流れに乗り遅れたり、慢心して世の中のニーズに鈍感になったりすれば、TDKも淘汰されます。そのため、TDKを内部から根本的に変えるための改革を進めてきました。
TDKは、M&Aでグループに入った企業にTDK流を押し付けることはせず、それぞれの文化や考え方を尊重し、経営の主体性もそれぞれの企業に委ねてきました。その結果、様々な国籍の人財で形成される「多様性の強さ」が醸成されています。2018年にグローバル人財本部をドイツのミュンヘンに設置し、執行役員のAndreas Kellerを人財本部長に据えて、グローバル人財戦略を推進しています。主眼に置いているのは、これまで同様に多様性を尊重しつつ、それぞれの強みを融合し、社会変革や環境変化にしなやかに対応できる強靭な組織を創り上げることです。現在、世界共通の人事評価基準をはじめとする人事プラットフォーム、連携強化に向けたコミュニケーションの促進、そして優秀な人財を世界横断的に発掘・育成する制度など、仕組みが完成しつつあります。成功例の共有も進んでおり、近い将来、優秀な人財をより活発に横展開できればと考えています。

ガバナンスでスピーディな意思決定が可能な組織を支えていきます。

約140社の連結子会社からなる当社グループが、極めて激しい変化が予想されるこれからの時代を乗り越えていくには、経営のスピードを上げていかなければなりません。また、中央集権的な組織ではなく、自律分散型の組織であることも必要だと考えています。そのためには「エンパワーメント&トランスペアレンシー」、つまり目標や理念を共有する人々を信頼し、権限を委譲することでやる気を引き出すとともに、互いに隠し事をすることなく、ステークホルダーへの透明性も確保していくことが大切だと考えています。
こうした考えのもと、本社の経営会議の改革を実施しました。従来の経営会議では、事業軸での議論に偏りがちで、TDK全体を俯瞰する視点や経営的視点からの議論が不十分でした。そのため、出席メンバーを刷新し、経営機能と事業部門が健全に議論を戦わせることができる場へと改革し、経営会議の名称もExecutive Committee Meeting(以下、ECM)に変更しました。現在は、各事業部門の答申に対し、技術や品質保証、財務、人事といった多面的、かつ中立的、全社的な観点で議論を行っています。また、ECMで事業に関して議論が尽くされた上で取締役会に答申するため、取締役会ではより高いレベルの議論に集中できており、意思決定の迅速化が実現しています。なお、9割以上の社員が海外で活躍するTDKにとって英語は共通言語であり、ECMをはじめ、社内の重要会議はすべて英語で実施しています。ECMは日本だけではなく、年数回は海外のグループ企業で実施しており、そのことがグループ内の距離を縮め、各拠点の士気高揚にも繋がっています。
本社機能の機構改革も実施しました。事業の主役であるBC(ビジネスカンパニー)やBG(ビジネスグループ)がお客様に向き合い、「コトづくり」に全力を投じることができるよう権限を委譲するとともに、後方支援するための様々な横串を通しています。グローバル本社はBCやBGに対し、技術開発、人事、法務などの機能を提供し、グローバルな連携を促進する横軸機能を担っています。さらに、中国、アメリカ、ヨーロッパに地域本社を設置し、グローバル本社と密接に連携しながら、地域ごとにきめ細かな機能の提供を行っています。
開発に関しても、グローバル本社が将来を見据えた素材・要素技術開発を担当する一方、BC、BGが既存技術を活用した製品化に集中するという役割分担で、スピードアップを図っています。また、世の中のニーズを肌で感じることで製品化をスピードアップすることを目的とし、本社所属の100名以上の開発要員をBCへ異動させました。
機構改革によって、取締役会から執行側へ、そして執行側からBC、BGへと権限委譲が確実に進んでおり、意思決定のスピード向上と連携の活発化を実感しています。一方、グローバル本社や地域本社によるモニタリングも強化し、透明性確保の面でも着実に手を打っています。取締役会評価にも表れている通り、一連の改革により、経営のレベルが着実に上がっている手応えを感じています。

持続可能な社会と企業の実現に向けて

「仕組み」を確かな成果に繋げていきます。

現在、米中貿易摩擦やBrexitなどによる世界経済への影響が懸念されています。当社の2020年3月期見通しにおいては、MLCCをはじめとする受動部品やリチウムポリマー電池など、2019年3月期の業績向上の立役者となった事業については大きな成長を前提としていません。しかし、中期経営計画に基づく施策を着実に遂行し、売上高、営業利益ともに過去最高の更新を目指します。センサとマグネットについては、確実に収益改善を図っていきます。同時に、長期的な成長に向けた仕掛けを講じる年度と位置付け、「攻め」の積極投資を行う方針です。
TDKグループの前には、無限の可能性が広がっており、私たちはそこで貢献する様々な技術力・ノウハウを豊富に有しています。持続的に価値を創造し続けるために、経営環境の変化に柔軟に対応し、成長し続けることができる仕組みづくりも大きく前進しています。「Value Creation 2020」期間中に、その成果は確実に実績となって表れます。
「創造によって文化、産業に貢献する」という社是に込められた創業者の想いを胸に、持続可能な社会の実現とTDKの永続的な発展に向けて、力強く前進してまいります。

2019年10月

TDK株式会社
代表取締役社長
石黒 成直

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