コーポレート・ガバナンス社外取締役が語る
TDKのコーポレート・ガバナンス

社外取締役 取締役会議長 指名諮問委員会委員長 イノテック株式会社 代表取締役会長 澄田 誠 社外取締役 取締役会議長 指名諮問委員会委員長 イノテック株式会社 代表取締役会長 澄田 誠

TDKに対する期待と想い
社外取締役から見るTDKのガバナンス

社外取締役
取締役会議長
指名諮問委員会委員長
イノテック株式会社 代表取締役会長

澄田 誠

石黒新社長への期待ビジネスを成就させTDKのパフォーマンスを
高めるにふさわしい人物

私は、指名諮問委員会の委員長を務めておりますが、社長の候補者選定の前に社長の役割と任期は重要なポイントであると考えていました。上釜前社長が就任してから10年が経過するということもあり、TDKの持続的な成長を実現するためにどのような体制を構築するべきか、徹底的な議論が行われました。

はじめは、TDKの場合は一つの製品を創り上げるにしても、素材から開発していくことを考慮すると任期10年というのは決して短くないという声もありました。しかし、社長の任期と製品開発サイクルは必ずしも一致するものではありません。やはり、ステークホルダーの利益を高めるためにふさわしい人物がTDKを率い、トップを支える体制をいかに構築していくべきか、その上で任期をどう設定するかという観点を軸に、何度も会議を実施してきました。加えて、インタビューも複数回実施しました。指名諮問委員会だけではなく、外部の専門家にも同じようにインタビューをしていただき、公平性、透明性を保つために尽力しました。

上釜前社長は、構造改革や積極的なM&Aなど新しい仕掛けを作ってきた実績があります。これらを結実させ、TDKのパフォーマンスを高めていける役割を担う人物を求めていました。

石黒社長は、厳しい市場環境の続くHDD用磁気ヘッド事業に関しても、泰然自若と構え、着実に手を打ってきました。危機が来ても、リーダーシップを持って堂々と対応できる、そんな印象を抱かせてくれる方です。また、HDD用磁気ヘッドの開発・生産体制を再点検しながら強化するという、グローバルな感覚を持ちながらビジネスを実践しています。ミクロナス社の買収の際も、先方は当初、日本の会社と組もうという意志はあまりなかったと伺っています。しかし、石黒社長は直接自身で交渉し、ミクロナス社の技術を活かしていくと辛抱強く説得を続けました。そして、最終的には合意に持っていき、積極的に議論を繰り返しながら、TDKグループとしてのセンサ技術を活かした戦略を構築していきました。そういった手腕は次世代のTDKを創るにふさわしいという判断に至りました。

関連技術の深い知見を有しながら、結果を出していく、その可能性を十分に感じさせてくれる人物こそ石黒社長です。勝ちゲームに持っていく「野球のクローザー」の様な役割でこれからのTDKを導くことを期待しています。

ガバナンス・コードの考え方を理解し、
実効性を伴ったガバナンスを構築する
真の多様性を追求し、
グローバル展開する礎を築く

「コーポレートガバナンス・コード」が発行されて、1年が経過します。様々な議論があることは理解していますが、私は「コーポレートガバナンス・コード」が日本企業のあり方を変え、中長期的な競争力を十分に高めていくための契機になると考えています。

そもそも、導入の背景には世界市場で競争力を発揮できなかった日本企業のあり方を改善していくにはどうするかという議論から始まったと思います。確かに、米国企業や海外投資家からの厳しい指摘はありましたが、米国企業は短期的に経営を考えているかというと決してそうではありません。事業ドメインをタイムリーに再定義しながら、中長期的に事業を健全化して競争力をさらに高め、いわば新しい時代に見合った形にしていくための変革を常に行っているのです。その変革の妥当性について、ボードメンバーや投資家が厳しく見ていく。こういった仕組みは日本では不十分だったと考えています。

重要なことは、単に体裁を整える、数値目標を達成するといった表面的なことではなく、中長期的に高い収益をたたき出せる事業運営にしていくために経営者がどれだけコミットできるかということではないでしょうか。その意味で、「コーポレートガバナンス・コード」は日本企業を内側から変革をもたらすものだと思っております。

「仏作って魂入れず」という言葉がありますが、いかに優れたルールでも、実践が伴わない限り結果は良い方向には進みません。しかし、TDKはガバナンスの重要性を経営陣全員が意識し、実効性を伴った形で機能していると評価しています。例えば、いち早く取締役会評価を外部に公表するなど、先進的な試みを実施しています。事業運営の面でも、中期経営方針で営業利益とROEの目標値を掲げ、いかにして目標を達成していくかについて取締役会でも積極的な議論を重ねています。

グローバルなガバナンスの構築という面でも、TDKは単に形を整えていくという消極的な意識ではなく、グローバルなオペレーションを構築する上で必要不可欠であったからこそ進めているという印象を持っています。TDKは現地の人材やビジネスの進め方を尊重しながらビジネスを成長させてきました。現地のオペレーションに大きく権限を委譲し、経営の舵取りを任せていることや、執行役員の17名の内7名が外国人であるというのも、その意識の表れです。その面で、「多様性」という言葉は流行語になっていますが、TDKの場合、企業価値を高めるという目標に向けて「多様性」を追求している、日本では珍しい会社であると思います。近い将来、日本人以外の方が、経営トップやそれに近い仕事をすることもあるのではと考えています。

投資家から期待され続けるTDKであるためにダイナミックな変革を目指す
TDKをガバナンスから支えていく

TDKは大きく変わろうとしています。積極的なM&Aだけではなく事業ポートフォリオの大幅な入れ替え、国内外拠点の統廃合や新設など、積極的に動いています。その背景には、お客様が国内メーカーから、成長著しいアジアや北米をはじめとした海外メーカーへ変わっていることが挙げられます。加えて、イノベーションに成功した新たな海外ベンチャーなど、新しい性格を持つお客様も増えてきました。こうした新たなお客様と深い関係を築き、ニーズに応えていくためには、これまでの日本の商習慣などでは対応できません。品質、デリバリー、コストといった多様化するお客様のニーズをいち早く捉え、迅速な開発・生産体制を構築するために、TDKは不断に変革を追求していかなくてはなりません。

TDKは自動車向け電子部品販売を強化していますが、求められるものは安全性だけではありません。自動運転等の新しいインテリジェンスを持つ自動車に適した電子部品、モビリティのシステムにマッチングするセンサといった、製品に対するお客様からの要求水準はますます高まっています。こういった要望に応えていくために、テクノロジーやエンジニアリング力など、TDKの強みを凝縮させ、売り込んでいける体制を築かなくてはなりません。そして、こうしたプロセスを進めていく中でTDK全体として力をつけていくものだと思っております。

これまでの20年、TDKはHDDビジネスで市場を席巻してきました。こういった一種の勝ちパターンを知っていることは大きな強みとなります。HDD用磁気ヘッドやその他の事業で培ってきたノウハウをセンサ・アクチュエータ、エネルギーユニット、次世代電子部品などの戦略成長製品に活かすチャンスが十分にあります。新たな成長段階に入っている電子部品業界でTDKはどこまでやり抜いていけるか、期待をしつつも、社外取締役の一員として厳しい目で見守っていこうと考えております。

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