TDKの将来戦略取締役会議長(社外取締役)に
よる評価

社外取締役
取締役会議長
指名諮問委員会委員長
イノテック株式会社
代表取締役会長
澄田 誠

TDKの成長を牽引してきたHDD用磁気ヘッドに加え、中核事業の電子部品も、現状のままでは収益の成長が鈍化することが見えていた3年ほど前から、TDKは将来、何を強みとし、どのような方向に向かうべきかなどの議論を進めてきました。

Qualcomm社との業務提携が戦略の方向性を決定付けましたQualcomm社との業務提携が戦略の方向性を決定付けました内部で育成するべき技術と、外部の力を借りて獲得する技術の仕分けを議論する中で、「ソフトウェア」や「アルゴリズム」の技術を有するQualcomm社と、それを自社の製品で具現化するTDKのパートナーシップが理想的であるという結論に達しました。そして同社との業務提携が、センサ事業の拡大をはじめとする大きな戦略の方向性を決定付けました。大きな流れが決まった後は、Micronas社やInvenSense社といった買収先の候補が上がるまで時間はかかりませんでした。案件の選定に際しては、センサ市場の需要動向や競合状況などをさまざまな角度から分析し、TDKの成長戦略にフィットする企業を探していきました。

ハイテク分野では、技術変革のサイクルが速くなり、また、企業買収コストも上昇しており、5年前と比較してリスクが拡大しています。一方、今後買収コストが低下するか否かを予見することはできません。一連の買収案件では、執行サイドが適切な範囲内でリスクを取ることができるよう、経営会議から付議された事業の妥当性や成長性など、取締役会は投資の効果やリスクについて多面的な検証を行い、フィードバックをかけ続けました。ファブレス企業であるInvenSense社に関しては、従業員や顧客のリテンションリスク(人材の確保や既存顧客維持のリスク)に対する執行サイドのスピーディーな対応を評価しています。

「攻め」の投資を進めていますので、フィージビリティ・スタディに際しては、ある程度ポジティブなシナリオを念頭に置きますが、たとえばInvenSense社のケースでは、ソフトウェアやアルゴリズムのように大きなシナジーの可能性があるものの、現時点であまり収益に寄与していないものについては、きわめて保守的に評価しています。また、無形固定資産にも計上されていない人に帰属する技術や、買収された側も気付いていないような価値を引き出し、いかに相互の企業価値を高めていけるかがTDKの今後の腕の見せどころだと考えています。

TDKのコーポレート・ガバナンスは、業務執行機能と監督機能の分離が進んでいると考えています。私が議長を務める取締役会では、意思決定の迅速化と、株主・投資家の皆様に対して説明責任を果たせるよう活発に議論することとのバランスを取る重要性を、3名の社外取締役が共有しています。吉田取締役は、過去の経験からベンチャー企業に対する投資リスクをよくご存知ですし、石村取締役も海外の企業買収の経験が豊富です。そうしたバックグラウンドが、M&A案件の評価や買収後のリスク管理の議論に役立っているのではないでしょうか。

3年ほど前より、取締役会で一層深い議論を行うために、経営会議で議論を尽くし、より重要な議案のみを付議するよう指摘してきましたが、2017年から経営会議のメンバーを絞り込んだことでこの課題も改善が進んでいます。

「かたち」は整いましたが、実績を上げていくのはこれからです。今後は、スピード感を持って実行プランを進めているか、戦略や投資先の検証をきちんと行っているかなどを注視していく考えです。買収企業をスピーディーに融合し、市場の懸念を払拭して、投資家の予想を上回る成長を示すTDKを、社外取締役の一人として期待しています。

PDFでは「TDKの将来戦略を理解する」の全文がご覧いただけます。

TDKの将来戦略