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従業員のソーシャルディスタンスを瞬時に測定できる、 超音波センサの実力
公開日: 2020年7月29日

従業員のソーシャルディスタンスを瞬時に測定できる、 超音波センサの実力

新型コロナウイルス感染症の拡大を抑えるために、オフィスや工場では、従業員のソーシャルディスタンス(社会的距離)を保ち、安全に仕事ができる環境づくりが求められています。従業員同士の接近を正確に測定するための技術として、超音波センサ(※1)を利用したソリューションに注目が集まっています。

企業におけるソーシャルディスタンス対策の重要性とは

感染症の拡大を防止するためには、人との距離を保ち、接触の機会をできるだけ減らすことが大切です。企業においても、従業員が安心して働ける環境をつくることはもちろん、感染拡大により、サプライチェーンへの影響や生産性の低下、企業の評判を損なうリスクを抑えることが重要です。そのため、世界中の企業で従業員同士のソーシャルディスタンスを確保するための接近アラームや、感染者との接触追跡ができるデバイスなどの実用化が求められています。

企業における新型コロナウイルス感染症のリスク

企業における新型コロナウイルス感染症のリスク

従来の距離センシング技術と超音波センサとの比較

これまで、人やモノの距離や位置を計測する手段としては、Bluetooth Low Energy(BLE)(※2)、RFIDトラッカー(※3)、超広帯域無線(UWB)(※4)、超音波センサなどの技術が使われてきました。今回のようなソーシャルディスタンスの警告や接触追跡などのソリューションを実用化するには、どんな条件が重要となるのでしょうか。TDKのグループ会社で、超音波センサの開発を行うChirp Microsystemsのジョセフ・ブサバ社長は、「距離測定が正確であること、低消費電力で電池寿命が長いこと、装置が小型で誤検知がゼロに近く信頼できること」と話します。

超音波センサによるソーシャルディスタンス対策の特長

超音波センサによるソーシャルディスタンス対策の特長

距離測定の精度で比較すると、超音波センサでは1cm未満、UWBは10cm未満と高い精度がありますが、BLEの測定精度は1〜2mと大きいため、安全な距離とされる2mの距離を検知するには十分ではありません。また、超音波センサはUWBよりもはるかに低い電力で動作するため、小型のタグを1回の充電で数日間使い続けることが可能になります。

距離センシング技術の比較

距離センシング技術の比較
従来の超音波センサ、UWB、Bluetoothと比較して、Chirpの超音波センサは、サイズ、精度、消費電力、誤検知の割合で優位であることが分かります。

超音波センサを使ったソーシャルディスタンス対策の実用例

Chirpが開発した「CH101」は、わずか3.5mm角サイズのチップにPMUT(圧電MEMS超音波トランスデューサ)(※5)と電力効率に優れたDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)(※6)、低消費電力のCMOS ASICを組み合わせた、ToF方式の超音波センサです。センサに搭載された超音波トランスデューサが超音波パルスを発信し、対象物からの反射波を受信します。この飛行時間(ToF:Time-of-Flight)をもとに、物体との距離を正確に検出することができます。従来の超音波センサと比べ、驚くほどの小型化を実現しているため、従業員が装着するウェアラブルタグやバッジなどに組み込んでの製品化が可能です。

超音波センサ「CH101」

超音波センサ「CH101」
従来の超音波センサと比較して、体積比約1/1000の小型化を実現しています。
Product Center

「タグやバッジは、ソーシャルディスタンスの警告と接触追跡のどちらにも対応できます」。Chirpの共同創設者でCTOのデビッド・ホースリ−氏は、感染防止のためのデバイスで想定される機能についてこう語ります。 タグを装着した従業員同士が6フィート(約1.83m)以内に近づくと、アラームを鳴らして警告することができます。さらに、タグにBLE(Bluetooth Low Energy)を組み込むことで、どのタグと接触したかを記録し、その履歴をデータベースに保存できます。万が一従業員の感染が判明した際に、過去に接触した人物を追跡することが可能です。

医療用電源
(左図)超音波センサを組み込んだタグのサンプル
(右図)タグを装着した人の接近を瞬時に検出して警告できます。

「超音波センサではソーシャルディスタンスを誤検知する可能性がほぼありません」とブサバ氏は自信を見せます。超音波は空気を伝わって距離を測定するため、壁やガラスなど人と人のあいだを隔てるものがある場合には、接触と検知することはありません。一方、UWBを使ったソーシャルディスタンスの検知では、電波が透過する壁や、最近職場に普及しつつあるアクリル製の板を挟んで近づいた人に対しても、接触だと誤検知するおそれがあります。

壁越しの接近に対する反応の違い

壁越しの接近に対する反応の違い
(左図)UWBなど電波を使った技術では、壁やガラス越しの接近を誤検知してしまう。
(右図)超音波センサは空気を介して接近を判断するため、誤検知がほとんどない。

消費電力についてもブサバ氏はこう説明します。「UWBは作動中、常に他のデバイスを検索するペアリングフェーズになるため、バッテリー消費が多くなってしまいますが、超音波センサでは消費電力を低く抑えられます」。一般的なUWBチップの待機時の消費電力が約400mWであるのに対して、Chirpの超音波センサでは0.7mWと、1/500以下の消費電力で動作し、実際の使用時の想定では、一週間(約40時間)充電する必要がありません。多くの従業員が勤務する工場では、メンテナンスのコストを抑えることも大切な要素のひとつです。

高精度で、小型かつ低消費電力を実現し、ソーシャルディスタンスを取ることで新型コロナウイルス感染症の拡大を抑える技術として期待されるChirpの超音波センサ。開発を担当したホースリー氏は、「私たちの技術が社会に役立つ機会を得られたことを光栄に思います」と話しました。
Chirpブランドの超音波センサ「CH101」について、詳細はプロダクトセンターをご覧ください。

用語解説

  1. 超音波センサ:超音波パルスを発信し、対象物からの反射波を受信した飛行時間(ToF: Time-of-Flight)をもとに、物体との距離を測定するセンサ。
  2. Bluetooth Low Energy (BLE):近距離無線通信技術Bluetoothの規格のひとつ。低消費電力と低コストが特長で、IoT機器のための通信技術として注目されている。
  3. RFIDトラッカー:RFID(Radio Frequency Identification)タグに記録された情報をレシーバーで受信することで、リアルタイムに位置情報を表示する技術。
  4. 超広帯域無線(UWB):比帯域幅が20%以上、または500MHz以上という極めて広い帯域幅を利用して送受信を行なう無線通信方式。
  5. PMUT(圧電MEMS超音波トランスデューサ):圧電効果を持つ、MEMSをベースとする超音波発信素子のこと。
  6. DSP(デジタル・シグナル・プロセッサ):デジタル信号を専門に処理するマイクロプロセッサ(CPUと言われる機能をマイクロチップで実装したもの)。

参照資料

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