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屋内位置情報システムは、COVID-19の感染拡大を防ぐ切り札となるか
公開日: 2020年9月8日

屋内位置情報システムは、COVID-19の感染拡大を防ぐ切り札となるか

世界中で広がる新型コロナウイルス感染症のさらなる拡大を抑えるために、ソーシャルディスタンスを確保し、人との接触を避ける、「新しい生活様式」へのシフトが世界中で進んでいます。屋外よりも屋内の方が感染拡大しやすい傾向もあり、今後、オフィスや工場が新たな感染拡大の中心となるのを防ぐために、多くの企業で従業員の行動をモニタリングし、接触者の追跡(コンタクト・トレーシング)を行う取り組みが始まっています。

オフィス・工場における従業員モニタリングのニーズ

人との距離を保ち、接触を避けることが、新型コロナウイルスの感染を防ぐためには重要です。しかし、オフィスや工場など、屋内で人との接触を避けることが容易ではない状況も多くあります。そこで、従業員同士の接触や行動の履歴をリアルタイムでモニタリングすることで、従業員の健康と安全を確保し、感染拡大を防ぐ技術へのニーズが高まっています。

屋外では、人やモノ同士の位置を特定する際に、GNSS(衛星測位システム)やBluetooth Low Energy(BLE)を使った距離測定が有効な手段となります。一方、屋内においては、Wi-FiやBluetooth、UWB(超広帯域無線)(※1)など、さまざまな無線通信技術を利用して、位置情報を取得できます。例えば、Bluetoothを使ったビーコン(※2)は、商業施設などでスマートフォンを持った顧客に、位置と連動した情報を提供するサービスとして実用化されています。しかし、Bluetoothの測位精度は約3〜10mと低く、インフラの設置状況にも左右されます。感染症の接触確認のためには、ビーコンの数を増やして精度を高める必要があります。また、UWBは、測位精度の高さが特長ですが、広い場所で利用するには、電波の送受信機や中継機を多く設置する必要があり、導入コストがかかるデメリットがあります。

屋内位置情報技術の比較

屋内位置情報技術の比較

「地磁気」を利用した位置情報ソリューションとは

そこで、屋内の位置情報を取得する手段として注目されているのが、「地磁気(※3)」を利用したソリューションです。TDKでは、スマートフォンに搭載された地磁気センサを利用して、端末を持つ人の現在地をリアルタイムで表示する位置情報ソリューション「Coursa® Venue(コルサ・ベニュー)」を開発。屋内の場所ごとに異なる固有の地磁気特性を利用して、端末の位置を特定することができます。

屋内での測位にはいくつかのアプローチがありますが、地磁気と慣性航法(※4)との組み合わせは、精度、信頼性、導入・維持費のバランスに優れています。「地磁気による測位が優れている点は、建物の構造と地球の磁場が干渉していれば、インフラを必要とせず、どんな場所でも使え、2m以下という高精度で測位できることです」。TDKのグループ会社であるTrusted Positioning Inc.の創設者であり、マネージングディレクターのクリス・グッドオール氏は説明します。

また、Coursa Venueは、屋内のフロアマップと現地で測定した地磁気データを組み合わせた「地磁気マップ」を作成するだけで、新たな機器や端末を設置する必要がなく、導入コストを低く抑えられるのも特長のひとつです。地磁気による測位精度は約2mと高く、特に屋内のフロアマップと組み合わせると、感染者との接触追跡に十分な精度を持っています。さらに、Coursa Venueは地磁気の情報に加えて、スマートフォン搭載の加速度センサ(※5)、ジャイロセンサ(※6)の情報を組み合わせることで、より精度の高い位置の特定が可能です。

「スマートフォンは、手に持って歩くこともあれば、ポケットやカバンの中に入れることもあります。持つ人と端末との距離や角度が一定ではないので、地磁気以外のセンサも使って、端末の動きや位置を補正する必要があります。この技術を実用化するまでに、数年の期間を要しました」とグッドオール氏は語ります。

Coursa® Venueの特長

Coursa® Venueの特長
Coursa Venueは、地磁気センサと加速度センサ、ジャイロセンサ、さらにBluetooth、Wi-Fiを組み合わせた独自の測位技術で、屋内でも正確な位置情報を取得できます。

接触追跡アプリの実証実験が進行中

東京・日本橋のTDK本社オフィスでは、2020年8月よりCoursa Venueを利用した従業員の接触確認の実証実験を行っています。専用アプリをインストールしたスマートフォンを持つ従業員の位置と、フロア内の行動履歴を匿名の識別情報と組み合わせて保存。人物の位置情報は、屋内の構造と組み合わせて分析されるため、壁やその他の障害物越しに近接したケースを除外して、より正確に一次接触者を特定できます。万が一感染者が発生した際には、データを解析し、感染者と過去2週間以内に接触した人をリストアップして、自宅待機を指示するなどの措置を行います。接触追跡の処理は自動化されており、複雑な屋内の構造に最適化されています。

また、このソリューションでは、感染者の近くにいた人を一次接触者として確認できるだけでなく、感染者がいた場所に直後に滞在した人物を二次接触の候補者として追跡できます。位置と時間経過を組み合わせて解析することで、屋内での一次接触の追跡と、時間と場所をもとにした感染者の追跡ができるため、より実用度の高い接触追跡が可能になります。

TDK本社での実証実験の様子

TDK本社での実証実験の様子
Coursa Venueのダッシュボードでは従業員個別のトラッキングデータを表示。
TDK本社での実証実験の様子
従業員の滞在時間と位置をヒートマップによって可視化できます。

※画面は開発中のサンプルイメージです。

屋内位置情報サービスが開く可能性

Coursa Venue は、従業員のスマートフォンだけでなく、地磁気センサと慣性センサを搭載した専用端末小型モジュール(開発中)でも人やモノの位置や履歴を特定できるため、感染症の接触追跡だけでなく、従業員の動線をモニタリングして業務効率の向上に役立てたり、機材の位置を把握して稼働状況を管理したりするなど、幅広い用途への展開が可能になります。現在、TDKでは複数の企業と協力して、位置情報を利用した様々な業務効率改善ソリューションをご提案させて頂いています。

「オフィスの全フロアでフリーアドレス制を導入するにあたり、Coursa Venueを活用した『リアルタイム座席表』を運用することにしました。社員がどこにいるのか分かるので、部門を超えた活発なコミュニケーションが期待できます」(株式会社サト― 代表取締役社長 小沼 宏行氏)

「これまで倉庫や工場、建設現場での作業員や資材・機材の動態管理にBLEビーコンを利用してきました。機器の設置やメンテナンス作業のコストが負担でしたが、Coursa Venueを使うことで、特に大規模な施設においてコスト削減効果が高いと考えます」(株式会社ゼンリンデータコム 経営企画本部長 田村 敏彦氏)

さらにCoursa Venueは、人と機械、人とクルマ、人とロボットなど、様々なものとの接触追跡に利用できます。将来、機械の自動化が進み、仕事環境が大きく変化していくなかで、人と機械との関係が安全上のリスクとならないように、Coursa Venueはあらゆるモノとの接触追跡アプリケーションの安全性を高めます。

新たなインフラコストを抑え、高精度の位置情報を取得できるCoursa Venueの屋内位置情報ソリューション。かつてGPSが屋外での位置情報の用途を拡大させたように、屋内測位のテクノロジーが、日常生活の中でますます拡がっていくと予想されます。

Coursa Venueの詳細は、Webサイトをご覧ください。

屋内位置情報サービスが開く可能性

屋内での人やモノの位置情報をモニタリングすることで、さまざまな用途への応用が期待されています。

用語解説

  1. UWB(超広帯域無線):比帯域幅が20%以上、または500MHz以上という極めて広い帯域幅を利用して送受信を行なう無線通信方式。
  2. ビーコン:低消費電力が特長の近距離無線技術「Bluetooth Low Energy」(BLE)を利用して位置情報を取得する技術。またはその技術を利用したデバイス。
  3. 地磁気:地球が発する磁気と磁場のこと。地球上のあらゆる場所で固有の値を示すため、屋内外での位置情報の特定に利用できる。
  4. 慣性航法:ジャイロセンサ、加速度センサなどによって速度や距離を算出し、自身の正確な位置を決定する方法。自動車や航空機のナビゲーションなどに利用される。
  5. 加速度センサ:物体の加速度を検出するセンサ。多くのスマートフォンに搭載されており、物体の動きや傾きを測定することができる。
  6. ジャイロセンサ:角速度センサとも言われ、デバイスの姿勢の変化や動きの状態を検出できるため、デジタルカメラの手ブレ補正やカーナビなどに利用される。
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