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【CEATEC 2020】 驚くほど小さなレーザーモジュールが、ARの常識を大きく変える
公開日: 2020年10月19日

【CEATEC 2020】 驚くほど小さなレーザーモジュールが、ARの常識を大きく変える

今回の記事では、「CEATEC 2020 ONLINE」に出展するTDKの新製品、超小型レーザーモジュールをご紹介します。ARやVRといった新しい映像体験が登場し、スマートグラスやヘッドマウントディスプレイなどの映像デバイスの性能も年々進化を遂げています。TDKはAR用のスマートグラスに映像を表示させるためのレーザー素子を新たに開発。レーザーモジュールの大幅な小型化を実現しました。

新しい映像体験を提供するAR/VR市場が拡大中

これまでのテレビやPCなどのディスプレイでは、画面に映し出された映像を見るだけでしたが、ARやVRなどの次世代映像技術では、自分が見ている風景に映像や情報を重ね合わせたり、自分の動きに合わせて映像の位置や角度が変化したりと、現実を拡張する感覚を味わうことができます。映像表示技術とソフトウェアのさらなる進化にともない、スマートグラス(※1)やヘッドマウントディスプレイ(※2)などの映像デバイス市場は今後さらに大きく拡大することが予想されています。

スマートグラス/ヘッドマウントディスプレイの市場規模

スマートグラス/ヘッドマウントディスプレイの市場規模

出典:富士キメラ総研「2020ワールドワイドエレクトロニクス市場総調査」

近い将来さらに大きな普及が見込まれているのが、AR(オーグメンテッド・リアリティ=拡張現実)です。すでに、スマートフォンの画面に映った実際の風景の中にキャラクターが登場するゲームや、家具購入前に部屋に家具のCGを表示させてシミュレーションできるアプリなどが登場しています。また、ウェアラブルデバイスであるスマートグラスの普及も始まっています。工場でグラスを装着した従業員に作業手順を指示したり、美術館で作品の情報を表示したりするなどの用途で実用化が進んでいます。しかし、これまでのスマートグラスは、ディスプレイやレーザーなど映像デバイスのサイズや重量が大きいため、見た目での違和感や、つけ心地に課題がありました。AR体験の質をさらに高めるには、現在よりも小型で軽量なデバイスの普及が求められています。

従来方式から大幅な小型化を実現した新方式のレーザーモジュールとは

一般的なAR用スマートグラスでは、映像を表示する際、光の三原色であるRGBの各色のレーザー素子からの光をレンズとミラーで反射させて、ひとつの光線として照射していました。「空間光学モジュール」と呼ばれるこの方式は、使用する部品の点数が多く、サイズが大きくなるという課題がありました。

これに対してTDKでは、レンズやミラーを使わない新技術「平面導波路技術」(※3)に注目し、レーザーモジュールの小型化に成功しました。高度な光通信技術を有するNTTが持つ、RGBの各色のレーザー素子から出た光を、平面上の道(導波路)を通してひとつに合わせて照射する平面導波路技術とTDKが持つ高精度生産技術を組み合わせることで、一般的な空間光学モジュールと比較して、体積比約1/10という大幅な小型化を実現しました。また、最大表示色は約1620万色とフルカラーでの映像表示を実現。高画質の映像によってAR体験の質がさらに高まります。

新開発の平面導波路光学モジュール

新開発の平面導波路光学モジュール
レーザー素子から出た光を平面の道に通して合わせる新技術により、超小型サイズのレーザーモジュールで約1620万色のフルカラー表示を実現しました。
マルチプル・タブ・ワインディング(MTW)
(左)従来の空間光学方式のレーザーモジュールを使用した場合の製品イメージ (右)新開発の平面導波路方式のレーザーモジュールを使用した場合の製品イメージ。モジュールの小型化によりスマートグラスの小型・軽量化に貢献します。

このモジュールから出たレーザー光は、MEMSミラーで映像化され、レンズに反射させて眼の網膜に直接映像を投影します。網膜に描き出された映像は、実際の物体を見るのとは異なり、ピントを調整する必要がなく、常に鮮明に見ることができます。風景と映像を重ね合わせるARグラスとして利用する際には、周囲と映像とのピントのズレがないため、よりリアルで質の高いAR体験が可能になります。

視力をサポートする機器の部品として実用化がはじまる

網膜に直接描き出すことで、見る人に鮮明な映像を届けられる特長を活かして、TDKの超小型レーザーモジュールは現在、視覚をサポートするためのスマートグラスへの搭載が進められています。この製品はフレーム中央にカメラを搭載し、撮影した画像をそのまま網膜上に描き出す原理により、視力調整機能(角膜や水晶体)の影響を受けずに鮮明な映像を見ることができます。このスマートグラスを開発した株式会社QDレーザ レーザデバイス事業部技術部長兼視覚情報デバイス事業部技術部長の鈴木誠氏にお話を伺いました。「聞こえをサポートする補聴器ではなく、視覚をサポートするための『補視器』という概念を知り、網膜に直接映像を描き出す方式が視覚支援になり得ることが分かりました。近視、遠視、乱視、老眼などがあっても眼鏡やコンタクトレンズなどの矯正手段を用いずに投影画像を見ることができます」。

さらにスマートグラスは将来、映像表示性能が進化することで、スマートフォンに代わる情報デバイスとなる可能性も秘めていると鈴木氏は話します。「今後、より違和感のないデザインや小型化、そして、現在のスマートフォンに劣らない情報量が提供できれば、スマートグラスは爆発的に普及すると考えています。現在はまだ実現できていませんが、超小型レーザーモジュールが現状の課題を打破するキーパーツになると期待しています」。

視覚をサポートする製品に採用

視覚をサポートする製品に採用
網膜に直接映像を投影することで視覚をサポートするスマートグラスにTDKのレーザーモジュールの採用が検討されています。
(画像提供:QDレーザ)

HDD用ヘッドで培ったTDKの製造技術

超小型レーザーモジュールの実現には、これまでTDKが様々な電子部品づくりで培ってきた製造技術が活かされています。幅約100マイクロメートルという極小のレーザー素子をキャリアと呼ばれる板に載せて正確に研磨する技術は、HDD用ヘッドを精密に加工する技術を転用したもの。また、レーザー素子をナノメートルオーダーの高精度で接合する技術には、HDDの磁気ヘッドで培った熱アシストヘッドの製造技術が活かされています。自社のスマートグラス製品にTDKのレーザーモジュールを採用した理由について鈴木氏は話します。「TDKには機能素子の設計・製造技術に関して豊富な知見があり、新製品の量産に関してもフレキシブルに対応できます。また、高度な検査技術を持っていることも採用のきっかけになりました」。

現在、ARなどの映像表示デバイスとして実用化がはじまったばかりの超小型レーザーモジュール。今後、VR用ヘッドマウントディスプレイや超小型プロジェクターなどの映像機器に加え、ポストスマートフォンとしてのスマートグラスにも応用が期待されるなど、その未来は大きな可能性を秘めています。

CEATEC 2020 ONLINE
本製品は、2020年10月20日~23日まで開催される「CEATEC 2020 ONLINE」に出展されます。TDKは、オンラインでのセミナーの開催や製品デモ映像の紹介を行います。詳細は特設サイトをご覧ください。

本製品「超小型レーザーモジュール」は、CEATEC AWARD 2020「ニューノーマル社会を支える要素技術・デバイス部門」準グランプリを受賞しました。

用語解説

  1. スマートグラス: 主にAR向けに使用されるディスプレイを搭載したメガネ型のウェアラブルデバイス。Wi-Fiなどでスマートフォンやコンピュータに接続して使用される。実際の風景の上に様々な情報を表示でき、今後スマートフォンに代わる情報端末として大きく普及する可能性も秘めている。
  2. ヘッドマウントディスプレイ(HMD):VR向けに使用される、頭部に装着する映像表示デバイス。エンターテインメント、医療、産業分野など幅広い用途での使用が始まっている。
  3. 平面導波路技術:光ファイバと同様の光導波路を、平坦な基板上に形成する技術。
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