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社会のDXを支える、HDD用ヘッド技術の進化とは?
公開日: 2021年1月7日

社会のDXを支える、HDD用ヘッド技術の進化とは?

クラウドコンピューティングの普及や5G通信などにより、社会のDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速しています。それにともない、全世界で生み出されるデータの量は爆発的に増加しています。あらゆる情報がデータになって記録される時代。ますます高まるデータストレージのニーズに応えるため、TDKはデータの読み書きを行う磁気ヘッドの次世代技術開発を通じて、HDDのさらなる大容量化に挑戦しています。

DX時代の大容量・低価格のデータストレージとしてのHDD

個人や企業をはじめ、IoTデバイスやセンサによってさまざまなデータが生み出され、その後の使用のためにインターネットを通じて記録される現代。デジタルデータの記録には、HDDをはじめ、SSDやフラッシュメモリが使われます。コンシューマ向けのノートPCでは、高速処理と低消費電力が特長のSSDが普及していますが、データセンターで使われるニアライン用ストレージ*1では、大容量かつビット単価(データ量あたりのコスト)に優れたHDDが主役となっています。今後、5G通信やIoTデバイスがさらに普及し、エッジコンピューティング*2が本格化することで、データセンターに記録されるデータ量はますます増加し、HDDのニーズもさらに高まると予想されています。

全世界で一年間に生み出されるデジタルデータ量

全世界で一年間に生み出されるデジタルデータ量

出所:IDC「Data Age 2025」 (グラフはTDKが作成)

全世界で一年間に生み出されるデータ量は、2025年には175ZB(ゼタバイト:1ZB=10億TB(テラバイト) 1TB=1,000GB(ギガバイト)=1,000,000MB(メガバイト))まで増加すると見込まれています。

磁気ヘッドが支えてきたHDDの記録技術の進化

HDDの記録容量は、パーソナルコンピュータ(PC)の普及とともに増加してきました。1980年代のPCに搭載されたHDD容量はわずか数10MBでしたが、2020年代では数TB(テラバイト)が一般的となり、その記憶容量は約10万倍にまで拡大しました。この飛躍的な大容量化を可能にした要因のひとつが、データの読み書きを行うHDD用磁気ヘッドの技術革新にあります。

現在、世界で唯一のHDD用磁気ヘッド専業メーカーであるTDKは、これまで数々の革新的なヘッド技術を開発してきました。1987年に「薄膜磁気ヘッド*3」を開発し、従来の記録密度を大幅に高めることに成功。また、2005年には、従来の「水平磁気記録*4」の限界を超える記録密度を実現する「PMR(垂直磁気記録*5)ヘッド」を実用化。高感度なTMRヘッド*6と組み合わせた垂直・TMRヘッドにより、HDDの記録密度はさらに向上し、大容量化が可能になりました。

HDDの内部と磁気ヘッド

HDDの内部と磁気ヘッド

そして現在、HDDの記録密度は1Tb/in2(テラビット/平方インチ)まで増加しました。これは1平方インチの中に1兆個もの磁石が並んでいるのと同様です。このような高密度化によって、記録層(磁性層)の記録ビットのサイズは極めて微細になり、現在の磁気ヘッド技術では書き込みの物理的な限界に近づきつつあります。TDKではその課題を解決するため、ふたつの次世代記録技術の開発に取り組んでいます。

CTO of Headway Technologies
Moris Dovek

次世代記録技術のひとつは、「マイクロ波アシスト磁気記録(MAMR: Microwave-Assisted Magnetic Recording)」方式。もうひとつは、レーザーを利用する「熱アシスト磁気記録(HAMR: Heat-Assisted Magnetic Recording)」方式です。ふたつの記録方式の開発に取り組む意義について、TDKグループの磁気ヘッドメーカーHeadway TechnologiesでCTOを務めるモーリス・ドベク氏はこう話します。

「現在、私たちはMAMR、HAMRというふたつの技術の開発を行っています。将来、どちらの技術が主流になるか分からないので、私たちはHDDヘッドの専業メーカーとして、ふたつの技術開発に取り組む必要があると考えています」。

磁気記録方式とHDDの記録密度の進化

磁気記録方式とHDDの記録密度の進化

(出所)TDK資料をもとに作成

HDDの記録密度は、これまでGMRヘッド、TMRヘッドなどヘッドの磁気記録方式の進化とともに増加し続けてきました。

次世代記録技術として注目されるMAMRとHAMRとは?

HDDの高密度化により記録ビットが微細になることで、熱安定性を維持するために記録ビットの保磁力*7を高くする必要があります。しかし、保磁力を高めると、ヘッドからの磁界だけではデータを書き込むのに十分ではないため、外部からエネルギーを加えて書き込みをアシストする必要があります。

MAMRでは、磁気ヘッド先端のスピントルク発振器*8からマイクロ波を照射して、記録ビットの保磁力を一時的に弱めて記録します。一方、HAMRでは、レーザー光線によって記録ディスクを瞬間的に加熱し、局所的に保磁力を弱めることで記録します。これらの次世代記録方式によって、今後HDDの記録密度は4Tb/in2にまで向上し、3.5インチHDDで現在の約4倍程度、約40~60TBの容量をもった製品が可能になると予想されています。

次世代磁気記録技術「MAMR」「HAMR」

次世代磁気記録技術「MAMR」「HAMR」
左)MAMR(マイクロ波アシスト磁気記録):ヘッド先端のスピントルク発振器からマイクロ波を生成し記録媒体の磁界を低減して記録します。
右)HAMR(熱アシスト磁気記録):記録ビットと同じくらい微細なレーザースポットで瞬間的に加熱して局所的に保磁力を下げて記録します。

TDKは世界で唯一の磁気ヘッド専業メーカーとして、世界中のHDDメーカーに磁気ヘッドを供給しています。「私たちはすべてのHDDメーカーと取引をしています。それぞれのカスタマーが独自のニーズを持っているため、多様な検証データや意見をいただくことができ、より良い仕事につなげることができます。また、MAMRとHAMRの両方の技術を研究できる立場を活かして、それぞれの分野の成果によって、相互に性能を高め合うことができます。最終的には、常にカスタマーの期待を超え続けたい、という思いが原動力となっています」と、ドベク氏は話します。

データストレージの主役としてこれからも進化しつづけるHDD。そのキーデバイスである磁気ヘッドの開発を通じて、TDKはデジタル社会の発展を支えています。

用語解説

  1. ニアライン用ストレージ:「ニアライン」は「near-online」の略で、業務処理データなどの利用頻度が高く、信頼性とパフォーマンスを要求される「オンライン(online)」と、長期保存を目的とする「オフライン(offline)」の中間をさす。大容量、低価格で高い信頼性が求められる。
  2. エッジコンピューティング:センサや情報端末などデータが生成される場所で情報処理することで高速の処理を可能にする仕組み。
  3. 薄膜磁気ヘッド:マイクロメートル単位の薄膜を何層も形成する高度な薄膜プロセス技術によって製造されるHDD用磁気ヘッド。
  4. 水平磁気記録:HDDの記録層の上に磁性層を水平方向に磁化する記録方式。
  5. 垂直磁気記録:HDDの磁性層を垂直方向に磁化させることで、記録密度を高める記録方式。
  6. TMRヘッド:TMR(トンネル磁気抵抗効果)素子を利用し、高密度の信号を正確に読み取ることができるヘッド。
  7. 保磁力:磁性体の磁化極性をゼロにするために必要な反対向きの磁場の強さのこと。磁石の強さを表す。
  8. スピントルク発振器:磁気抵抗素子に電流を流してマイクロ波を発生させ、磁化方向を変更または反転させられる高周波発振器
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