コンデンサ・ワールド

第3回 電子回路の隠れた主役 コンデンサの機能(2)「直流を通さず交流を通す」

過去の記事を整理・一部リライトして再掲載したものです。 古い技術情報や、 現在、TDKで扱っていない製品情報なども含まれています。

コンデンサには電荷を蓄えるという性質とともに、直流を通さず交流を通すという重要な機能があり、電子回路ではさまざまなかたちで利用されています。電子機器に誤動作などを起こすノイズの多くは、周波数の高い交流成分。コンデンサはノイズ対策部品としても不可欠の電子部品です。
コンデンサは絶縁体(空気や誘電体)によって極板が隔てられた構造となっています。直流電流を通さないのはわかりますが、では、交流電流を通すのはなぜでしょうか?

コンデンサの誘電体(絶縁体)に電流は流れるのか?

コンデンサは直流電流を遮断することは容易に理解できます。たとえば直流電源の乾電池にコンデンサをつなぐと、一瞬電流が流れ、すぐに電流は流れなくなってしまいます。 直流電源によってコンデンサの静電容量いっぱいに電荷を蓄えられると、コンデンサには直流電流が流れなくなるのです。コンデンサの電極板は絶縁体(空気や誘電体)によって隔てられているので、絶縁破壊が起こらないかぎりコンデンサ内部に直流電流が流れることはありません。つまり、コンデンサは直流電流を遮断します。それでは、なぜコンデンサは交流電源を通すことになるのでしょうか?

電界の変化は電流が流れるのと同等

交流電流はプラス、マイナスと極性が規則的に変化しています。コンデンサは極性が交互に変化する交流に合わせて充電、放電を繰り返し交流電流を通過させています。
電磁気学の基本法則によって説明してみましょう。導線に電流が流れると電流の方向に対して右回りに磁力線が発生し(エルステッドが発見した電流の磁気作用)、電流の流れが切り替わると、磁力線の方向も切り替わります。
では、交流電源にコンデンサをつなぐとどうなるでしょうか? 電流の向きが交互に切り替わると、極板間に発生する電界の向きも交互に切り替わります。電界の変動は変動する磁界を発生させるので、これは電流が流れることと同等とみなされます(マクスウェルの電磁理論)。したがって、絶縁物であるコンデンサの誘電体内部にも、交互に電流が流れていると考えてさしつかえないことになります。というわけで、コンデンサは交流電流を通すと説明されています。ただし、導線の中に流れる電流と同じような電流がコンデンサの誘電体に流れるわけではありません。厳密には導線の中を流れる電流は伝導電流、絶縁体の中を流れる電流は変位電流と呼ばれています。

周波数が高い交流ほどコンデンサは通しやすい

電圧(V)=抵抗(R)×電流(I)・・・中学校の理科で習う有名なオームの法則です。この法則は抵抗の中を流れる交流電流にも通用します。コンデンサもまた交流電流に対して抵抗のように振る舞います。これを容量リアクタンスといいます。しかし、コンデンサはどんな交流電流も同じように流すわけではなく、コンデンサの容量リアクタンスは交流周波数に反比例します。
数式で表せば、容量リアクタンス(Xc)は、1/(2πfC)で表されます。fは交流周波数、Cはコンデンサの静電容量です。つまり、周波数が高いほど、また静電容量が大きなコンデンサほど、交流電流に対する抵抗(容量リアクタンス)が小さくなり、電流を通しやすくなります。

コンデンサがノイズ対策部品となる理由

ノイズ対策に用いるコンデンサは、「周波数が高い交流ほど通しやすい」という性質を利用しています。ほとんどのノイズは高い周波数をもつ交流電流の集まりなので、高い周波数を通しやすいコンデンサを利用すれば、ノイズを減らすことができるのです。
たとえば、蛍光灯を点灯するとラジオの音声に雑音が入ることがあります。蛍光灯の点灯には高い電圧(キック電圧といいます)が必要なため、これを安定器のコイルとグロースタータの接点の開閉でつくりだしています。スイッチが入り、グロースタータの接点が開閉を始めると、電流が急激に流れたり、流れなくなったりします。この急激な電流変化には高周波電流が含まれており、ノイズとなってラジオの受信に干渉して雑音になるのです。そこでノイズ抑制のためにグロースタータと並列にコンデンサが接続されます。コンデンサの「周波数が高い交流ほど通しやすい」性質によりノイズはコンデンサを流れ、外部への流出を少なくできます。
とはいえノイズにはさまざまなタイプがあり、コンデンサだけで完璧には除去できません。とりわけ微小な電流・電圧で作動する電子回路においては、ノイズは誤動作や故障といったトラブルの原因となります。このためインダクタと組み合わせた各種ノイズフィルタを用いたり、磁気シールドしたりなど、きめ細かなノイズ対策が施されています。

インダクタとコンデンサの組み合わせで各種LCフィルタができる

直流を遮断し、高い周波数の交流ほど通しやすいというコンデンサの性質は、電子回路において、さまざまなかたちで利用されています。最も基本的なのは、コンデンサと抵抗器とを組み合わせた回路です。
コンデンサを回路に並列、抵抗を直列につないだ場合、周波数の高い交流成分ほどグランド(アース)に流れ込みます。これはつまり、高い周波数成分をカットして低い周波数成分を通すローパスフィルタ(LPF)と同じです(下図・左)。
逆にコンデンサを直列、抵抗を並列につないだ場合、直流成分は遮断され、周波数の高い交流成分ほど通りやすい回路となります。これはつまり、低い周波数成分をカットして高い周波数を通すハイパスフィルタ(HPF)と同じです(下図・右)。
実際のローパスフィルタやハイパスフィルタは抵抗のかわりにインダクタ(コイル)を用いて、より急峻なカーブを描くように周波数特性を向上させています。ある周波数帯域のみ通過させるバンドパスフィルタ(BPF)なども含め、これらはインダクタ(L)とコンデンサ(C)を組み合わせたフィルタ回路なのでLCフィルタと総称されています。

カップリングコンデンサ、バイパスコンデンサ、デカップリングコンデンサ

ICを利用した電子回路では、カップリングコンデンサ、バイパスコンデンサ、デカップリングコンデンサなどと呼ばれるコンデンサが多用されています。
下図に示すのは電流をトランジスタで増幅する一般的なアナログ回路の例で、微弱な信号電流(交流)を直流電圧に重畳させて次段の回路に送り込んでいます。しかし、個々の回路ブロックはそれぞれ動作条件が違うために、信号電流のみを通過させ、直流電流は遮断する必要があり、コンデンサが挿入されます。これをカップリングコンデンサといいます(カップリングは結合という意味)。
バイパスコンデンサはノイズなどの交流成分をグランドに流す(バイパスする)目的で使われます。略してパスコンと呼んだりもします。下図では電源-GND間に挿入しています。直流電源に重畳するノイズをバイパスして安定した電源電圧をトランジスタに供給します。また、ICに供給される電源電圧も変動すると回路動作が不安定になります。これを防ぐためにICの電源ピンとグランド間にコンデンサが挿入されます(下図)。これもバイパスコンデンサ(パスコン)です。交流を遮断して直流のみを通過させることからデカップリング(カップリングの反意語)とも呼ばれます。広い周波数帯で特性向上を図るため、大容量コンデンサと高周波特性にすぐれた積層セラミックチップコンデンサが並列接続されたりします。
門外漢にはとっつきにくい用語が並びますが、ひるむことはありません。いずれも直流を遮断し、周波数の高い交流ほど流しやすいというコンデンサの基本機能を応用したものです。
とはいえ高周波領域においては、配線や内部電極の抵抗やインダクタ(コイル)成分が無視できないものになり、コンデンサ単体でもLCフィルタのように振る舞いはじめます。つまり高周波の世界ではコンデンサは別の顔をあらわにしてくるのですが、その話は次号でご紹介します。

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