メインコンテンツに移動

なるほどノイズ(EMC)入門2

第11回 電波暗室とEMC対策

過去の記事を整理・一部リライトして再掲載したものです。 古い技術情報や、 現在、TDKで扱っていない製品情報なども含まれています。

電波エンジニアリングと次世代の電波暗室

周辺に電磁ノイズの影響を及ぼさず、自らも周辺からの電磁ノイズの影響を受けないEMC対策が、電気・電子機器の設計・開発段階から強く求められるようになっています。 EMC測定にはすぐれたトレーサビリティや再現性をもつ高性能の電波暗室が何よりも重要です。
いまや電波暗室は単なる測定ツールではなく、強力な開発ツールへと進化を遂げています。

ますます重要性を増している電波暗室

私たちの身近には、電気・電子機器や無線機器、情報通信システムなど、多くの電磁波発生源が存在し、さまざまな電磁波を放射しています。これらの機器から発生する電磁波(または電磁ノイズ)は、周辺の機器に影響を及ぼす可能性があり、また、機器自体も周辺の機器から影響を受けます。ここにおいて、「外部に電磁ノイズを出さない」というエミッション問題(EMI:Electro Magnetic Interference)と、「外部からの電磁ノイズによって影響を受けない」というイミュニティ問題(EMS:Electro Magnetic Susceptibility)を両立させるのがEMC(Electro Magnetic Compatibility)対策。多種多様な電気・電子機器や無線機器、情報通信システムを共存させるために、周辺に影響を及ぼさず、自らも周辺から影響を受けないEMC対策が、さまざまな機器の製品設計・開発段階から強く求められています。
電子機器から放射されている電磁ノイズの電界強度は、屋外のオープンサイト(OATS:Open Area Test Site)での測定が基準とされています。しかし、屋外の測定は風雨などの天候に左右されやすく、周囲から到来する電波の影響を受けやすいのが難点。また、イミュニティ試験ではきわめて強い電界が照射されるため、電波法などの関係により、屋外のOATSでは実施できません。そこで、電波暗室は、こうした測定・試験を高信頼性かつ効率的におこなう施設としてますます重要となっています。

電波吸収体の主流はフェライト

電波吸収材料は、磁性、誘電性および抵抗性吸収材料の3つに分類されます。磁性吸収材料の代表的なものには、フェライト焼結体(以降フェライト)、軟磁合金およびカルボニル鉄などを樹脂に複合化したものがあげられますが、EMC試験用電波暗室の壁面に適用されるのはフェライトが主流となっています。フェライトは、高周波の交流磁界に対して磁気損失(自然共鳴や磁壁共鳴など)を起こします。これを利用したのがフェライト電波吸収体。従来ではテレビ電波のような高周波の電波に対して、そのエネルギーをよく吸収して熱に変換させるため、高層ビルの壁面反射から生じるテレビゴースト障害を低減させる目的で使用されてきました。長年にわたり培った素材開発技術の深化により、フェライトはEMC試験用電波暗室の主力電波吸収体としてさらなる発展を遂げています。

新開発の中空截頭ピラミッド形電波吸収体により、電波暗室をさらに進化

電波暗室とは外部からの電磁波の影響を受けず、また外部に電磁波を漏らさないように設計・施工されたシールド空間です。電波暗室の始まりは1950年代初期で、もともとは無線機器やアンテナの実験・研究用施設でしたが、本格的なノイズ規制が始まった1980年代以降、電子機器の放射ノイズ試験測定用にさかんに建設されるようになりました。
電波暗室は空間全体を金属でシールドし、天井・壁の5面あるいは床を含めた6面に電波吸収材を施工した施設です。評価する電気・電子機器や無線機器、情報通信システムの大きさや使用目的により、電波暗室の大きさや適用する電波吸収体が決められます。EMC試験には10m法電波暗室と3m法電波暗室が利用されています。
EMC試験では測定結果の再現性を確保するために、“サイトアッテネーション”と呼ばれる特性が規格として定められています。その電波暗室がEMC試験用に適した電磁環境かどうかを調べるためのもので、送受信アンテナと測定用アンテナ間の伝送損失が基準値以内に納まっていることが要求されます。

1996年にスタートしたEMC指令から、ノイズ規制の対象は大型・重量機器にまで広がりました。また、あらゆる家電製品が情報通信システムを搭載し、従来よりも製品が複雑化してきています。そのため、ますます10m法電波暗室の需要が拡大しています。
10法電波暗室の壁面を構成する電波吸収体は、広帯域かつ少なくとも20dB以上の電波吸収特性が求められます。これを誘電性電波吸収体のみで実現するには、電波吸収体の長さを5m以上とする必要があり、巨大な建築容積となります。このため、1960年代に東京工業大学の末武国弘教授、内藤喜之教授、清水康敬教授によるフェライトと誘電損失体を組み合わせた複合電波吸収体が研究・開発されて以降、10m法電波暗室では長さの短い複合電波吸収体が主流となっています。
複合電波吸収体のさらなる高性能化と長さの短縮化を目指し、蓄積した電波エンジニアリング技術の粋を結集してTDKが開発したのが、新規構造の中空戴頭ピラミッド形電波吸収体です。従来型のピラミッド構造の頭部をカットし、長さを30%近くも短縮しながら高性能化を実現。10m法電波暗室はもとより、あらゆるタイプの電波暗室が、これまでにない建築容積の縮小と大幅な工期短縮で実現します。

電波暗室を中核とするTDKのトータルEMCソリューション

1969年に世界初のフェライトを用いた電波暗室を開発して以来、ますます高度化するニーズにたえず応えてきたのがTDKの電波エンジニアリング技術。TDKの電波暗室の納入実績は世界で850基近くにものぼり、その設計・開発技術、施工技術、メンテナンス体制は高い評価を受けています。
さらに、今後の電波の利用周波数は、マイクロ波からミリ波、サブミリ波へと拡大していきます。使用目的に応じた多種多様な電波吸収体を豊富にラインナップしているのもTDKの強み。マイクロ波からミリ波、さらにはサブミリ波領域まですぐれた吸収特性をもつ電波吸収体を用いたTDKの電波暗室は、次世代携帯電話や無線LAN、UWB通信、RFIDシステム、ITSにおける各種センシングなどの研究・試験などに大きく貢献しています。きたるべきユビキタス時代を支えるキーテクノロジーの1つは無線通信技術。TDKは電波暗室を中核とするトータルEMCソリューションにより、ユビキタス時代に向けた製品開発を強力にサポートします。

PAGE TOP