2019.04.26

TDK Front Line

Vol.1 世界No.1のセンサソリューション・プロバイダーを目指して

あらゆるモノがインターネットでつながる近未来のIoT/IoE社会は、膨大な数のセンサによるセンサネットワークで支えられます。世界屈指の電子部品・デバイスメーカーであるTDKは、2016年以降、センサ関連で積極的なM&Aを展開し、非光学分野のほとんどのセンサを擁する製品・技術ポートフォリオを拡充。さらに、複数のセンサやIC、ソフトウェアなどを一体化させた高度なセンサフュージョンにより、多様な市場ニーズに対応可能な強固なセンサビジネスフォーメーションを構築しました。世界No.1のセンサソリューション・プロバイダーを目指すTDKの取り組みをご紹介します。

マイコンとセンサを搭載して電子機器は大きく進化

スマートフォンやタブレットはじめ、家電機器やOA機器、自動車、産業機器、ロボットなどには、さまざまなセンサが使用されています。ますます多機能化・インテリジェント化する電子機器にとって、センサは不可欠なキーデバイスとなっています。

エレクトロニクスの世界で、センサという用語が一般化したのは比較的新しく、1970年代のことといわれます。光、音、熱、圧力などの物理量を検出して電気信号に変換する役割をもつことから、1960年代まではディテクタ(検出器)やトランスデューサ(変換器)などと呼ばれていました。

1970年代はIC技術の発達により、多くの機器や装置にマイコンが搭載されるようになった時代で、効率や利便性、安全性を高めるために、各種のセンサが使われるようになりました。マイコンを人間の頭脳にたとえると、センサは五感にあたり、ディテクタやトランスデューサという堅苦しい用語よりも、センサという言葉がしっくりとしていることから、センサはまたたくまに一般語として定着しました。

センサは五感にとどまらず、加速度センサやジャイロセンサ(角速度センサ)など、体感(運動・平衡・重量)に関するセンサもあります。これらはスマートフォンのモーションセンサ、カーナビゲーションシステム、ロボットやドローンの姿勢制御などで重要な働きをしているセンサです。
また、人間には知覚できない磁気、超音波、赤外線、紫外線、放射線などを検知するセンサなどもあり、その種類は広範多岐にわたります。

積極的なM&Aの展開により、ほぼすべての非光学式センサをラインアップ

TDKは1935年、日本で発明された画期的な磁性材料であるフェライトの工業化を目的に設立されました。以来、1970年代には高音質の音楽録音を可能にするカセットテープを開発して世界を席巻し、1980年代には積層インダクタをはじめとする積層チップ部品の製品化により電子機器の小型・軽量化に貢献、さらに1990年代には高度な薄膜技術を駆使した磁気ヘッドの開発により、HDDの飛躍的な大容量化を推進してきました。TDKが世界に誇る“4大イノベーション”です。

TDKの発展の原動力は、たえず自己変革しながら“非連続な進化“を成し遂げてきたことです。TDKは今また、近未来のIoT/IoE社会の要請に応えるため、2016年よりセンサ関連で積極的なM&Aを展開し、世界No.1のセンサソリューション・プロバイダーを目指して、大胆な戦略を次々と打ち出しています。

TDKのセンサ関連事業は2019年4月現在、
● 磁気センサビジネスグループ
● 温度・圧力センサビジネスグループ
● MEMSセンサビジネスグループ
という3つのビジネスグループで推進されています。
2017年にはそれらを統括する司令塔的な組織として、センサシステムズビジネスカンパニー(SSBC)を新設し、強固なセンサビジネス・フォーメーションを構築しました。

小型・高性能のセンサの製品化には材料技術と量産技術が重要

センサは物質の特性や物質が起こす現象を利用して電気信号として出力する素子です。主なセンサ材料としては、金属・合金、金属間化合物、半導体(シリコン、化合物半導体など)、セラミックス(磁性・圧電・半導体・焦電体など)、固体電解質、有機高分子などがあります。

また、センサに利用されている原理・効果としては、光電効果(光→電気)、圧電効果(圧力・音→電気)、熱電効果(熱→電気)、ホール効果や磁気抵抗効果(磁気→電気)などがあります。これらの原理・効果の多くは19世紀に発見されていますが、高感度・高性能の実用的なセンサ素子として製品化するには、それに適した材料と製法が求められます。また、小型化・高信頼性・低消費電力化・低価格化という要件も満たさなければなりません。

たとえば、家電機器やOA機器、産業機器などで温度センサとして多用されているNTCサーミスタは、温度による抵抗の変化率がきわめて大きい特殊な半導体セラミックスが用いられています。サーミスタ特性を示す材料は、1833年頃、イギリスのM.ファラデーによって発見されましたが、温度センサとして実用化されたのは、ほぼ1世紀を経た1930年代以降です。材料組成や製造プロセスのわずかな違いが特性に影響を与えるため、再現性・安定性の高い温度センサとして製品化するには、きわめて高度な技術とノウハウを必要とするのです。

TDKではTDKブランドとEPCOSブランドのNTCサーミスタを豊富にラインアップしています。材料設計技術、焼成技術などの先進のセラミックス技術とともに、SMDチップタイプの製品では、積層セラミックチップコンデンサなどで蓄積した積層技術が駆使されています。

温度センサ
(NTCサーミスタ)

ホールセンサも加わってTDKの磁気センサ製品・技術は大幅に拡充

ICやLSIの素材であるシリコンは、さまざまなセンサにも使用されています。TDKがMicronasブランドで提供しているホールスイッチやリニアホールセンサは、電流磁気効果の一種である半導体のホール効果を利用した磁気センサです。
静磁場や動磁場の検出、N・Sの磁極の判別など、多様な用途にフレキシブルに対応できるのがホールセンサの特長です。ホールスイッチはブラシレスモータの磁極判別用などに、また、リニアな出力が得られるリニアホールセンサは、角度センサ、位置センサなどとして広く用いられています。

TMRセンサとホールセンサの複合化
ホールセンサが加わったことにより、TDKの磁気センサ製品・技術は大幅に拡充されました。超高感度・高出力を特長とするTDKのTMR(トンネリング磁気抵抗効果)センサとホールセンサを組み合わせた自動車用の角度センサも開発しました。エンジンルームなどの過酷な使用環境でも、どちらか一方がセンサ機能を維持する可能性が高まるため、冗長性が大きく向上します。

磁気センサ
(TMRセンサおよびホールセンサ)

IoT/IoE時代に向けてMEMSセンサの需要は急増

センサの小型化・量産化において画期的なイノベーションをもたらしたのは、マイクロマシニング技術とも呼ばれるMEMS(微小電気機械システム)技術です。これはICやLSIなどの集積回路の製造に使用される3次元微細加工技術を利用して、シリコンウエハ上に、センサや回路、可動部などを多数同時に一括製造する技術です。
MEMS技術は、1970年代に研究が始まり、初のMEMSセンサとして自動車エンジン制御用の圧力センサが実用化され、その後、エアバッグ用の加速度センサや安全走行用のジャイロセンサなどが開発されました。近年はスマートフォンのMEMSマイクはじめ、カメラの手ぶれ補正用やモーショントラッキング用として、加速度センサやジャイロセンサが多用されるようになりました。スマートフォンの画面が本体の動きに応じて縦横に自動回転するのも、搭載された加速度センサによるものです。

MEMSセンサによる高機能・高付加価値のソリューション
TDKのMEMSセンサは、EPCOSブランドの圧力センサなどとともに、高い設計力を誇るInvenSense社の加速度センサやジャイロセンサ、Tronics社の慣性センサ、Chirp社の超音波センサなどが加わり、高度なセンサフュージョンが可能となりました。

9軸MEMSモーションセンサ
(3軸ジャイロセンサ、3軸加速度センサ、3軸電子コンパスを1パッケージに一体化)

MEMSセンサの小型化や信頼性、低コスト化に深く関わるのはパッケージング技術です。MEMSセンサはチップ化するダイシングの前工程として、ウエハ状態で封止されます。これをウエハレベルパッケージング(WLP)といいます。さまざまな手法がありますが、InvenSense社の“Nasiri(ナシリ)プロセス”と呼ばれる工法は、回路を形成したICウエハをMEMSウエハで蓋をするようにかぶせて真空封止するとともに、電気的に接合するという独自の技術です。世界初の2軸ジャイロセンサ、3軸ジャイロセンサ、6軸モーションセンサ(3軸ジャイロセンサ/3軸加速度センサ)、9軸モーションセンサ(3軸ジャイロセンサ/3軸加速度センサ/3軸電子コンパス)といったInvenSense社の革新的なMEMSセンサは、この“Nasiri(ナシリ)プロセス”によって開発されました。

こうした先進のMEMS技術を集約したTDKのMEMSセンサプラットフォームは、IoT/IoE時代に向けた高付加価値の複合化センサやセンサソリューションの創出に期待されています。

IC設計技術やソフトウェア技術とのフュージョンにも期待
センサは単に計測するための素子ではなく、情報の処理・分析・解釈するソフトウェア/アルゴリズムを含めたICと一体化したインテリジェントなセンサ(スマートセンサ)やセンサモジュールへと進化しています。
欧州におけるASIC(特定用途向け集積回路)設計のトップメーカーであるICsense社もTDKグループに加わったことにより、センシングで得られた信号を処理するデバイスに不可欠な先進のIC設計技術も確保しました。InvenSense社をはじめとするTDKグループ各社の技術シナジーも期待できます。

世界のセンサ市場は急拡大しており、2020年代には世界のセンサの年間出荷量は1兆個を超え、いわゆる“トリリオンセンサ社会”が到来するといわれます。圧倒的なラインアップを誇るTDKの各種センサ製品や技術については、本シリーズにおいて、さらに詳しくご紹介する予定です。

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