電気と磁気の?館

No.11 共振・共鳴現象とは?同調(共振)回路の仕組み

過去の記事を整理・一部リライトして再掲載したものです。 古い技術情報や、 現在、TDKで扱っていない製品情報なども含まれています。

音波は空気の振動、電波は電磁界の振動、地震波は大地の振動です。あらゆるものは固有振動数をもっていて、外部からの振動周期と合うと共振(共鳴)して振幅が大きく高まります。共振(共鳴)現象はやっかいな問題も引き起こしますが、楽器や機械、電気・電子回路、とりわけ電波を利用する無線機器などできわめて重要な役割をはたしています。

自然界は共振=共鳴現象であふれている

 

グラスハープ(glass harp)と呼ばれる楽器があります。といってもガラス製のハープ(竪琴)ではありません。ワイングラスやブランデーグラスのような足つきグラスの縁を指でこすり、摩擦の振動によって“ヒュ〜ン”という連続音を発する楽器らしからぬ楽器です。グラスに入れる水の量を加減することによりドレミファ…の音階をつくれるので、グラスをたくさん並べてメロディや和音を奏でることもできます。グラスに入れる水の量が多いほど、奏でる音は低くなります。グラスの振動だけでなく水の振動も関係しているようです。

グラスハープ


 中国で古くから伝わる“噴水魚洗”も、グラスハープと似た原理のもの。外見は2つの取っ手がついた中華鍋のような銅盆で、水を入れて取っ手を両方の手のひらで素早くこすり続けると、銅鍋はブンブンという音を発して水が振動を始め、やがて水面から水しぶきが噴き上がります。高く噴き上げるコツは、適量の水を入れることと、取っ手をこする手の動き。熟練者となると水しぶきの高さは1m近くにも達するそうです。

噴水魚洗


 重力に反して水が噴き上がるのは、銅盆の中の水の固有振動数と、摩擦による振動周期が一致して共振現象が起き、水の振動が定常波となるからです。定常波というのは波形が変わらない振動のこと。両端が固定されたギターの弦が一定の音を奏でるのも、両端を波の節とする定常波が生まれているからです(実際には整数倍の倍音も含みます)。定常波は波形が一定なので、供給されるエネルギーは振幅の増大に費やされます。噴水魚洗においては、人間の手の摩擦によって供給されるエネルギーが、定常波の振幅の増大をもたらし、水しぶきを噴き上げるのです。
 共振=共鳴というのは、離れた場所にエネルギーを伝達する現象でもあります。たとえば共鳴箱に据えた音叉を鳴らすと、同じ大きさの共鳴箱に据えられた離れた音叉を鳴らします。こうした理科実験にかぎらず、自然界は共振=共鳴現象に満ちあふれています。「心の“琴線”に触れる」深い感動とか、「以心伝心」というのも、ある種の共振=共鳴現象なのかもしれません。

音叉と共鳴箱によるエネルギーの伝播

 

■ 特定の周波数を選択する同調回路

 共振というのはラジオやテレビ、携帯電話などの無線機器の同調回路においても利用されている現象です。
 抵抗とともに3大受動電子部品であるコンデンサやコイルは、電流に対して正反対の性質を示します。2枚の電極が絶縁物をはさんで向き合う形状となっているコンデンサは、直流は流しませんが交流を流し、しかも交流の周波数が高くなるほど、リアクタンス(交流における抵抗)は小さくなって流しやすくなる性質があります。一方、コイルは周波数の低い交流は、直流のようにスムーズに流しますが、周波数が高くなるにつれ、リアクタンスは大きくなってだんだん流れにくくなります。

コイルとコンデンサの性質


 この相反する性質をもつコンデンサとコイルを組み合わせると一定周波数の電波を選別する同調回路がつくれます。前号でご紹介した鉱石ラジオは、同調回路を理解するうえで好適です。

鉱石ラジオの基本回路


 鉱石ラジオのアンテナは、さまざまな周波数の電波をとらえ、検波回路(鉱石やダイオード)によって一定方向の電流を流します。しかし、これでは特定周波数の信号を選択できません。
 そこで、回路に並列または直列に、コンデンサとコイルを組み合わせた同調回路を挿入します。ここでは並列タイプの同調回路を例に説明します。
 交流に対して相反する性質をもつコンデンサとコイルを並列すると、共振現象により山型の周波数-インピーダンス特性をもつ回路素子となります。低い周波数の電流はコイルが通過させ、高い周波数の電流はコンデンサが通過させますが、山の頂点にあたる周波数(共振周波数)ではインピーダンス(抵抗)が極端に高いために流れにくく、電流はイヤホン側に流れます。これを言い換えれば、イヤホン側には山の頂点にあたる周波数の電流のみが通過することになります。これが同調回路の基本原理です。

同調(共振)のしくみ(並列型)


 同調回路の発明者は、コヒーラ検波器(前号参照)の発明者でもあるイギリスのロッジ(1898年)。当時としては画期的なアイデアでした。というのも、初期の無線通信は、高圧の火花放電から発する電波を利用するものでした。この電波はいろんな周波数成分を含む電波で、ノロシのように間歇的に発生させることでトン・ツーの2値信号を送っていましたが、これでは無線局が増えると混信してしまいます。そこで一定の周波数による通信が求められるようになり同調回路が発明されたのです。携帯電話、無線LAN、UWB通信など、今日の無線通信のかぎりない発展も、このシンプルな同調回路からスタートしたのです。

 

■ 高周波回路の共振現象とノイズ問題

 ラジオやテレビで選局するためのダイヤルやボタンは、同調回路のコンデンサ(C)やコイル(L)の定数(キャパシタンスやインダクタンス)を変えることにより共振周波数を変えています。
 同調回路は特定の周波数帯の信号を通過させたり遮断したりするLCフィルタ(ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ)と原理的に同じものです。たとえば信号ラインに直列にコイル、並列にコンデンサを挿入すると、高周波の信号をコイルで跳ね返すとともに、コンデンサでアースへと流し、信号電流だけを通過させるローパスフィルタとなります。

蛍光灯と冷陰極管


 高周波領域のノイズを除去するため、LCフィルタはノイズフィルタとしても使われます。ただし、信号周波数がメガヘルツ、ギガヘルツへと高くなるにつれ、高周波ノイズの周波数領域と接近してくるため、ノイズフィルタには通常のLCフィルタよりもキレのよい(急峻な減衰特性をもつ)ものが求められます。
 しかも、高周波回路では回路図には現れないコンデンサ成分(キャパシタンス)やコイル成分(インダクタンス)も抵抗成分(レジスタンス)による共振現象が、さまざまなやっかいな問題を引き起こします。たとえばわずかな配線のカーブもコイル成分をもち、また配線とアース間の静電容量がコンデンサとして作用します。そればかりでなく電子部品のリード線すらもコンデンサ成分やコイル成分をもちます。このため、高周波領域では共振現象を起こして同調回路やLCフィルタのように作用し、たとえばパルス状の矩形波(方形波)の形が崩れたり、クネクネとなまったりして、信号の伝送エラーを起こしたりします。その周波数のことを自己共振周波数(SRF)といいます。

コイルが持つ抵抗成分とコンデンサ成分


 このような問題が深刻化してきたのは、身の回りにデジタル機器が登場しはじめた1970年以降のこと。電子機器の高速化・高機能化・多機能化が進めば進むほど、高度なノイズ対策が求められるようになっています。
 共振=共鳴現象というのは自然界の普遍的な現象。ときにはやっかいな問題も引き起こしますが、それを乗り越え、たくみに利用することで、エレクトロニクス社会は大きく進歩を遂げてきました。クォーツ(水晶発振子)を用いた発振回路、レーザ、MRI(磁気共鳴画像装置)なども共振現象を利用したシステムです。

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