電気と磁気の?館

No.14 液晶テレビのバックライトとインバータトランス

過去の記事を整理・一部リライトして再掲載したものです。 古い技術情報や、 現在、TDKで扱っていない製品情報なども含まれています。

蛍光灯は放電ランプの一種で、白熱電球と違って点灯には高い電圧が必要。商用の交流電源から高い電圧を得るために、安定器のコイルが重要な働きをしています。蛍光灯よりもさらに高い電圧が求められるのは、液晶テレビのバックライトなどに使われる冷陰極管。高特性のフェライト材を利用したインバータトランスが、液晶テレビの大画面化に大きく貢献しています。

蛍光灯の安定器の役割は?

 

蛍光灯は19世紀から試作されていましたが、量産技術がアメリカのGE社により確立され、一般への販売が開始されたのは1938年頃。日本でも1940年に製造されるようになり、白熱電球よりも発熱が少なく明るい照明として、法隆寺金堂の壁画を模写する際の照明として使われました。この模写作業は第2次世界大戦をはさんで戦後も続けられましたが、1949年1月26日、電気座布団のスイッチの切り忘れによる火災が起き、壁画が焼失するという事故が起きました。文化財保護法はこの火災事故をきっかけに制定されたものです。
 フィラメントから飛び出した熱電子がランプ内の水銀粒子に衝突し、このとき発生する紫外線によってランプ内壁の蛍光体を発光させるのが蛍光灯の原理。蛍光灯は放電ランプの一種で、点灯しているときは放電電流が蛍光ランプ内部を流れます。しかし、放電を開始させるためには高い電圧が必要です。その役割をになうのが安定器のコイルです。
 コイルは直流電流をスムーズに流しますが、交流電流に対してはブレーキをかけて抵抗のように振る舞います。コイルには流れてくる電流を流すまいと阻止し、逆に止まりそうになる電流を流し続けようとする性質があるからです。これをレンツの法則といいます。電子回路で使われるチョークコイルも同じ性質を利用したもの。チョークとは“詰まらせる”という意味です。
 蛍光灯の初期の点灯方式は手動スタートによるものでした。スイッチを押し続けてフィラメントを予熱させ、ころあいをみてスイッチを離すと、レンツの法則によって安定器のコイルは電流を流し続けようと高電圧を発生します。この高電圧を引き金として放電が始まり、蛍光灯が点灯するのです。グローランプを用いた方式は、点灯までの手動操作をグローランプ内部のバイメタルが受け持っています。バイメタルは膨張率の異なる2種類の金属を貼り合わせたもの。グロー放電が起きると、その熱によって接点が閉じます。


グローランプ方式の蛍光灯の点灯のしくみ

 

■ ラピッドスタート方式はグローランプが不要

 点灯するまで時間がかかる蛍光灯の弱点をなくし、スイッチを入れたとたん、すぐに点灯するのがラピッドスタート方式です。ラピッドスタート方式の蛍光灯には、グローランプがないかわり、磁気漏れ変圧器という特殊なトランスが用いられます。鉄心の1次コイルに電流変化が起きると、2次コイルに起電力が誘起されて電流が流れるのがトランスの原理。1次・2次の電圧はコイルの巻数に比例し、電流は反比例します。磁気漏れ変圧器というのは、フィラメントを加熱させるための巻線と、放電を開始させるための巻線を別々に設けたトランスです。
 フィラメント予熱用巻線は巻数が少なくしてあるため大電流が流れます。また、鉄心からの漏れ磁束は、放電後にコイルに流れる電流を一定に保つ役割を果たします。これはコイルに流れる電流が増加しようとすると、漏れ磁束も増加して電圧が下がるからです。なかなか巧妙なアイデアです。ラピッドスタート方式の磁気漏れ変圧器は通常の安定器よりも大型で重くなりますが、多数の蛍光ランプをいっせいに点灯するのに適しているため、主にオフィスビルや駅、公共施設などの照明として使われています。
 ラピッドスタート方式とは別のしくみで瞬時の点灯を実現しているのがインバータ方式の蛍光灯。内蔵した電子回路により交流電源を高周波に変換して点灯するため、フィラメントの予熱時間がごく少なくてすみます。また、安定器が不要なので小型・軽量化を図ることができ、チラツキが少ないのも特長です。
 液晶ディスプレイのバックライトには冷陰極管が使われます。発光原理は蛍光灯と同じですが、フィラメントがなく、電極に1000V以上の高圧を加えて放電させる方式です。電子回路に流れる直流のままではトランスによる電圧変換できないため、直流をいったん交流に変えて昇圧します。このトランスはインバータトランスと呼ばれます。

ラピッドスタート方式の蛍光灯

 

■ インバータトランス

 高輝度が求められる液晶テレビにおいては、バックライトとして多数の冷陰極管が使われます。従来、バックライトを点灯させるため、冷陰極管のおのおのにインバータトランスが搭載されました。これを独立駆動方式といい、たとえば40本の冷陰極管が使われている大画面液晶テレビでは40個のインバータトランスが必要でした。しかし、もし1個のインバータトランスで複数の冷陰極管を点灯させることができれば、部品点数は大幅に減って省スペースとコストダウンが図れます。これを多灯並列駆動方式といいます。
 そこでTDKが開発したのが多灯並列駆動方式用のインバータトランス。発熱ロスのきわめて小さな高特性フェライト材をトランスコアとして採用して、従来40個必要だったインバータトランスをわずか4個にまで削減。回路に要する部品点数も半分以下になり、省エネとともに省スペースにも貢献します。
 また、このところの金属材料の価格高騰などにより、液晶パネルのカバーは従来のアルミニウムから鉄に置き換えられています。ところが、鉄は磁性体であるため、インバータトランスからの漏れ磁束は、液晶パネルの鉄カバーに渦電流を発生させてしまいます。これは火を使わない安全な調理器としておなじみの電磁調理器と同じ原理です。電磁調理器では発熱を利用しますが、液晶パネルにおいては電力ロスをもたらすだけでなく、ノイズ発生の原因となったりします。
 TDKでは蓄積したフェライト技術と先進の磁界シミュレーション技術を駆使、独自の磁気シールド構造により、この渦電流問題を解決したインバータ用防磁トランスも開発しました。大画面化と高精細化がますます求められる液晶テレビを強力にサポートする新製品です。
 

液晶パネルと多灯並列駆動方式

 

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