電気と磁気の?館

No.24 電磁調理器にも利用される“渦(うず)電流”とは?

過去の記事を整理・一部リライトして再掲載したものです。 古い技術情報や、 現在、TDKで扱っていない製品情報なども含まれています。

東京・上野の国立科学博物館では、ワイヤの長さ19.5m、金属球の重さ約50kgという巨大振り子の運動が展示されています。考案者の名をとって“フーコー振り子”と呼ばれるもので、地球の自転を初めて目で確認した装置として知られています。
 フーコー振り子の振動面(重りとワイヤの運動方向)は、時間とともに時計回り(北半球)に回転していきます。ではなぜ、これで地球の自転が証明できるのでしょうか?

地球の自転を目で確認できる“フーコー振り子”

フーコー振り子の振動面の回転は、直観的にはわかりにくいものですが、宇宙からの視点で考えるとよくわかります。たとえばフーコー振り子を北極点に設置したとします。宇宙から眺めると振り子の振動面は一定ですが、観測者のほうは地球といっしょに回転するので、観測者からは振り子の振動面が回転するように見えるのです。振動面は北極点では1日に1回転し、緯度が下がるとともに回転の大きさは小さくなり、赤道上ではゼロとなり、南半球では反時計回りに回転するようになります。
 フーコーは渦(うず)電流の発見(1855年)でも知られ、渦電流はフーコー電流とも呼ばれます。渦電流とは磁界変化の中に置かれた金属などの導体に生じる渦状の電流のことです。渦電流による作用は、簡単な実験で確かめられます。図のように、銅やアルミなど、磁石に吸いつかない金属円板をつくり、その上で磁石をすばやく回転させると、銅円板もそれにつられて回転を始めます。逆に銅円板を回転させておいて、磁石を近づけると回転にブレーキがかかります。
 この現象はファラデーによる電磁誘導の発見以前の1824年にアラゴにより発見され、“アラゴの円板”と呼ばれていました。ファラデーもアラゴの円板に触発されて、電池で駆動する回転装置(ファラデーモータ)を考案しました。実用的なものではありませんが、これが世界最初のモータといわれています(そのしくみは、本シリーズ・第4回「手回し発電機にみるハイテク今昔物語」をご参照ください)。
 

フーゴー振り子

 

アラゴの円板の簡単な実験

 

■ 渦電流を利用した大型車や電車の電磁ブレーキ

 運動する物体はどこまでも運動しようとし、静止する物体はいつまでも静止しようとします。力学でおなじみの“慣性の法則”です。電磁気にもこれと同様の働きがあり、磁界変化にさらされた導体は、その変化を妨げようとして、電磁誘導の作用により磁束が生じます。この磁束をつくるのが渦電流です。
 わかりやすくいえば、渦電流は導体内部にできるコイルのようなものと考えればよいでしょう。外部の磁界変化に対して、導体は自ら“天然のコイル=天然の電磁石”となって、磁界変化を妨げようとするのです。
 渦電流の働きは大型車や電車などの電磁ブレーキとして利用されています(リターダなどとも呼ばれます)。下り坂などでブレーキを利かせるときなど、電磁ブレーキを補助ブレーキとして使うのです。回転シャフトに取り付けたドラムと非接触に電磁石を配置したのが電磁ブレーキの基本構造。走行中に電磁石を作動させると、回転するドラムは電磁石の磁束の変化を妨げるように渦電流を発生し、回転にブレーキをかけることになります。
 電磁ブレーキは非接触なのでディスクなどの部品の磨耗がないのが利点です。では、電磁ブレーキによって速度を落としたとき、その運動エネルギーはいったいどこに消えていったのでしょうか? エネルギー保存則からいって、無からエネルギーは生ぜず、エネルギーが無に帰することもありません。渦電流の発生によりドラムにはジュール熱が発生します。運動エネルギーは熱に変換されるのです。

渦電流と電磁ブレーキの原理

 

■ なぜトランスコアにフェライトが使われるのか?

 渦電流によって発生する熱を積極的に利用したのが電磁調理器やIH方式の電子炊飯ジャーです。その内部には高周波(周波数の高い交流)を発生するコイルが格納されています。高周波の激しい磁界変化によって、鍋底や釜に渦電流が流れ、それにともなって発生するジュール熱で、調理したり炊飯したりするしくみです。
 渦電流はトランスなどにとっては、やっかいな存在です。トランスコアは1次コイルの電流変化に伴う磁束変化を、磁性体のコアによって2次コイルに伝えます。このとき電磁調理器と同じ原理で、コアに渦電流が流れて発熱するのです。これを渦電流損といいます。トランスコアにケイ素鋼などの薄板を積層して使うのは、渦電流の損失を小さくするための工夫です。しかし、高周波ともなると、この工夫も功を奏しなくなり、発熱による損失は急増してしまいます(高周波領域では周波数の2乗に比例する渦電流損が支配的になる)。
 そこで高周波で使うトランスやコイルのコア材料として不可欠なのがフェライトです。酸化鉄を主成分とする多結晶体であるフェライトは、金属とちがって電気抵抗値が高いので、発熱ロスを大幅に低減することができるのです。
 フェライトは微量添加物や焼成条件の違いにより、さまざまな特性のものがつくれ、無限の可能性を秘めるといわれる電子材料です。TDKのフェライトコアはパソコン、携帯電話、デジタルテレビ、ハイブリッド車など、さまざまな電気・電子機器に多用され、省エネや小型化、性能向上などに貢献しています。

渦電流の積極活用

 

渦電流損失の低減

 

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