電気と磁気の?館

No.80 回生エネルギーの活用はスマート社会のキーテクノロジー

過去の記事を整理・一部リライトして再掲載したものです。 古い技術情報や、 現在、TDKで扱っていない製品情報なども含まれています。

水飲み鳥、コーヒーサイフォン、スターリングエンジン

 「水飲み鳥」と呼ばれるガラス製の玩具があります。ゆっくりと振り子運動で首ふりをしながら、ときどきコップの水を飲むかのような動作を延々と繰り返します。モータやゼンマイなどはなく、マジックのような仕掛けもありません。外部からエネルギーが補給されていないように見えるので、永久機関と誤解されることがあります。しかし、これは永久機関ではありません。周囲の空気の熱エネルギーを運動エネルギーに変えるという小さな熱機関なのです。
 その原理はコーヒーサイフォンと似たものです。水を入れたコーヒーサイフォンをアルコールランプで下から熱すると、やがて沸騰して内部の蒸気圧が高まり、湯を押し上げます。火を消して熱するのをやめると、水蒸気は凝結して蒸気圧が下がり、押し上げられた湯は吸い込まれて元に戻ります。水飲み鳥において、このアルコールランプにあたるのが周囲の空気の熱なのです。  
 水飲み鳥は自然エネルギーを利用した熱機関なので、巨大な水飲み鳥をつくって発電機とつなげば、“気温発電システム”となりますが、残念ながら大出力を得るにはコストパフォーマンスが低すぎます。
 ただ、水飲み鳥やコーヒーサイフォンと同様の原理で動くエンジンは、19世紀初頭に考案されています。シリンダ内に密封したガスを外部から加熱・冷却することでピストン運動をつくり出し、これを動力として利用するものです。考案者であるスコットランドの牧師スターリングの名をとって、スターリングエンジンと呼ばれます。出力ではガソリンエンジンなどの内燃機関に、とうていかないませんが、原理も構造もシンプルで、効率にすぐれるため、一部の特殊用途で使われています。

 

■ ハイブリッドカーの燃費向上に寄与する回生ブレーキ

 ポスト石油時代に向けて、モータリゼーションはエコカーへとシフトしています。現在のところエコカーの主流はHEV(ハイブリッドカー)です。エンジンとモータを積載し、低速走行時などはモータのみで駆動、あるいはエンジンをモータでアシストして走行する方式です。これも燃費向上に寄与していますが、リッターあたり30〜40kmもの低燃費に大きく関わるのは回生ブレーキです。
 摩擦方式の通常のブレーキでは、運動エネルギーは熱となって捨てられてしまいます。回生ブレーキは、運動エネルギーでモータを発電機として回転させ、その負荷によってブレーキをかける方式。さらに、発電した電気エネルギーはバッテリに蓄電され、モータ駆動に利用するというスマートなシステムです。  
 このような回生ブレーキは、以前から鉄道電車で利用されてきました。モータを発電機として回転させることによって減速し、発電した電気エネルギーは架線に送り戻しているのです。ただし、電気エネルギーというのは、発生と使用が同時である必要があります。送り戻した電気エネルギーを使用してくれる電車が近くにいない場合は、回生ブレーキがかからなくなってしまうのです。これを回生失効といいます。また、回生ブレーキによっても、すべての運動エネルギーを電気エネルギーに変換して利用できるわけではありません。
 そこで、近年、大容量バッテリを搭載したハイブリッド電車が開発されました。回生ブレーキによる電気エネルギーを架線に送り戻すのではなく、搭載バッテリの蓄電に使用するのです。これによって回生失効の問題を解決するのみならず、エネルギーの利用効率もアップ。さらには、架線のない区間でもバッテリ走行できるなどのメリットをもたらします。ディーゼル車にバッテリを搭載させたハイブリッド機関車も開発されています。回生ブレーキによって省エネを図るとともに、排出ガスや騒音も低減した環境にやさしいエコ機関車です。
 

 

■ 回生エネルギーの利用を高効率で実現する双方向DC-DCコンバータ

 ハイブリッド化の波は自動車や鉄道ばかりでなく、産業機器にも押し寄せています。エンジンとともにモータを搭載したハイブリッド型の建設機械も開発されていて、モータはエンジンのアシストやアームの旋回などに利用されます。建設機械は大きな瞬発力が求められるので、モータ駆動にはバッテリ(2次電池)ではなく蓄電器(電気二重層キャパシタ)を採用。回生ブレーキによって蓄電器を充電するため、通常の建設機械よりも格段に燃費を向上させています。
 こうした回生ブレーキを利用した蓄電システムの効率に大きく関わるのは、電力変換をになう電源デバイスです。バッテリの電気エネルギーで交流モータを駆動するためには、インバータで直流から交流に変換する必要があります。また、その変換効率を高めるには、バッテリの直流電圧を昇圧するDC-DCコンバータが必要です。また、回生ブレーキで得られた電気エネルギーはインバータを経由して、バッテリに充電されます。このとき、インバータからの高電圧を充電用の低電圧に降圧するためのDC-DCコンバータが必要になります。
 従来、このような電源システムを構築する場合、昇圧用と降圧用の2台のDC-DCコンバータを切り替えて使用するしかありませんでした。そこでTDKが開発したのが双方向DC-DCコンバータEZAシリーズ(TDKラムダブランドにて提供)。昇圧・降圧の電力変換を1台でこなす最新鋭の電源です。さらにはデジタル制御により、放電・充電ともにトップレベルの高効率を実現しました。
 双方向DC-DCコンバータは、クレーン、エレベータ、ロボット、自動搬送機、ハイブリッド型の建設機械など、各種産業機器において応用が可能。モータ減速時に発生する回生エネルギーを双方向DC-DCコンバータを介してバッテリに蓄え、大電流が必要となるモータ起動時に蓄えた電気エネルギーでアシスト。これによりエネルギーを無駄なく再利用でき、省エネに大きく貢献します。回生エネルギーの活用は、これからのスマート社会に求められるキーテクノロジーの1つです。
 

 

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