テクの図鑑

vol.1 従来の5倍の衝撃に耐えるHDDヘッド

過去の記事を整理・一部リライトして再掲載したものです。 古い技術情報や、 現在、TDKで扱っていない製品情報なども含まれています。

従来の5倍の衝撃に耐えるHDDヘッド

 

HDD(ハードディスクドライブ)といえば、まず話題になるのが大容量化。 だが今回TDKでは、HDDの弱点である耐衝撃性に目をつけた。 従来の5倍の衝撃をものともせずに安定した記録を可能にする、高耐衝撃機構HDD用ヘッドである。

■ ナノの精度で浮上するヘッド

ハードディスクのデータを読み書きするヘッドは、ナノテクノロジーの結晶である。たとえば、読み取りヘッドの膜には、厚さが1nm(ナノメートル、100万分の1ミリ)程度の薄膜技術が投入されている。データが書かれているトラックの幅は約100nmしかなく、ヘッドはこの狭いトラックを正確にトレースしていかなければならない。さらに、ヘッドはディスク上を約10nmほど浮上しながら、データを読み書きするのである。  

ヘッドそのものは肉眼では見えないほど小さく、このヘッド素子はスライダと呼ばれる極小チップに取り付けられている。スライダの大きさがおよそ0.7mmとする。これを長さ70mのジャンボジェット機にたとえると、10nmという浮上量は、たったの1mmでしかない。つまりジャンボジェット機が、地上スレスレを飛んでいることになるのだ。

ナノの精度で浮上するヘッド。落下などの衝撃が加われば、ヘッドがディスクに接触して、たちまちクラッシュとなることが容易に想像できる。もちろん衝撃に対する耐久性を考えて設計されているが、たとえば現在のHDDは、高さ30cmからコンクリートの上に落とせば、読み書きが不能になってしまう。モバイル機器へのHDD搭載が標準となっている現在、HDDの耐衝撃性の問題は、大容量化の一方で大きなハードルともなっているのである。

■ 左右のバランスをとって衝撃吸収

耐衝撃性を飛躍的に向上させた要因は2つある。機構部の構造見直しと、ヘッドを浮上させる風圧のコントロールだ。HDD用ヘッドは、力学的な要素を多くもった精密機構部品のかたまりでもある。従来のヘッドの場合、重心はヘッド寄りにあった。  

それが今回、重心が支点のところにくるように変更された。しかも、ヘッドはピボットとよばれる針のような軸で支えられている。ここで思い浮かぶのが、ヤジロベエのバランスのとり方だ。ヘッドに強い衝撃が加わっても、その衝撃は支点で吸収されてしまう。だから、スライダが大きく振れることはなく、ディスクに接触することもないわけである。もうひとつが風圧のコントロール。スライダは、高速で回転するディスクの風圧をうけて浮上するように設計されている。10nmという浮上量をキープできるのも、ディスクとスライダの間の空気が一種のバネとして機能するからだ。この空気バネの定数を高めることで、衝撃による振れを抑えているのだ。

■ 動作時の耐衝撃性が従来の5倍

従来の5倍、1000Gのショックにも耐えられるという、新機構のHDD用ヘッド。1000Gとは、自分の重さの1000倍もの力を受けるという意味だ。たとえば携帯電話の重さが100gとすると、1000Gで瞬間的に受ける衝撃は100kgにもなる。別の表現をすると、テニスのスマッシュ時のインパクトに相当するといわれる。  

落としても壊れないHDDは、業界の夢だった。大容量、高速アクセス、コストで、半導体メモリに勝るとされているHDDだが、ただひとつの弱点が耐衝撃性。これを見事に克服したのが今度のHDD用ヘッドだ。耐衝撃性の大幅向上により、携帯電話へのHDD搭載も視野に入ってきた。携帯電話に、長時間の動画像を蓄積させることも可能になる。このヘッドを使ったHDDのアプリケーションは、携帯電話以外にもいろいろ考えられる。PDAなどのモバイル機器をはじめ、カーナビゲーションシステムにも最適、さらに高耐衝撃性のメリットは鉄道や報道の用途にも、卓越した信頼性で応えることができるのだ。TDKのヘッドから、HDDが大きく変わろうとしている。

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