テクの雑学

第82回 CCDとCMOSの違いとは? −撮像素子の特長−

過去の記事を整理・一部リライトして再掲載したものです。 古い技術情報や、 現在、TDKで扱っていない製品情報なども含まれています。

デジタルスチルカメラやムービーカムコーダーの普及によって、それらが「撮像素子(もしくはイメージ・センサ)」として使っている「CCD」は、すっかりポピュラーな言葉になっています。
 最近では携帯電話の内蔵カメラでも、従来の主流だった「CMOS」に代えてCCDを採用するものが増えてきています。面白いのは、逆に高級一眼レフデジカメなどでCMOSを採用する例が目につき始めていることです。
 今回は、代表的な撮像素子であるCCDとCMOSの構造、それぞれの特徴などについて簡単に解説してみましょう。

「像」を撮るしくみ

 私たち人間は、眼球に飛び込んでくる光を水晶体と虹彩を通じて網膜に「像」として映し出し、その刺激を視神経を通じて脳に伝達するというプロセスによって、視覚情報を得ています。ここで水晶体をレンズ、虹彩を絞り、そして網膜を銀塩フィルムに置き換えたものがアナログカメラの基本構造です。
 デジタル映像機器における撮像素子は、眼球における網膜、アナログカメラにおけるフィルムの役割を置き換える半導体で、具体的には「光をセンシングし、信号に変換する素子」ということになります。
 

■ CCDの登場

 固体素子の形で撮像素子が登場したのは1960年代です。トランジスタやICなどに使われる半導体が、光電効果(光を受けることで電子が活発化する性質)を持つことがわかってきたのがきっかけとなって、「フォトトランジスタ」「フォトダイオード」などが考案されました。
 それらの開発競争の中で登場したのが、光を電荷に、そして信号に換えて転送する機能を持つCCD(Charge Coupled Devices 電荷結合素子)です。最初のCCDは1969年、アメリカのAT&Tベル研究所で開発されました。さまざまな用途が想定される中、その特性から撮像素子への応用に向けて研究・開発が重ねられ、1982年にビデオカメラ用撮像素子として製品化されます。

 CCDを構成する要素は「集光レンズ」「カラーフィルタ」「受光素子=フォトダイオード」「転送回路」に大別できます。ちなみに、デジカメなどの性能指標として用いられる「画素数」は、このフォトダイオードの数を指しています。
 CCDに当たった光は、集光レンズによって特定の大きさに区切られながら、カラーフィルタを通じてフォトダイオードへ導かれます。フォトダイオードは光の強弱しか感知できず、階調表現や色調表現ができないため、カラーフィルタによって特定の範囲の波長だけを通し、その輝度情報を色データに変換しているのです。
 カラーフィルタとフォトダイオードの構成にはいくつかの種類があります。ポピュラーなのは1枚のフィルタで光の三原色であるRed、Green、Blueを処理する「単板式」などと呼ばれるものです。1回のシャッターで結像できることから、デジタルカメラの多くがこのタイプを採用しています。また、受光部分は1個ながら、R、G、Bそれぞれ1枚ずつのフィルタを備えているのが「3CCD」と呼ばれるタイプです。ほかには、スキャナなどで用いられる「ラインCCD」などがあります。

光を電気信号に変換するしくみ


 光を受けたフォトダイオードは、その強弱に応じて電荷を生じます。しかし、それぞれの電荷はあまりに小さいため、そのままでは画像処理を行なうことが困難です。つまり、画像処理回路までの間にアンプ(増幅装置)を配して信号を増幅してやるわけですが、その過程がバケツリレー式に転送されることがCCDの特徴のひとつです。
 シャッターが閉っている状態では、それぞれのフォトダイオードは電荷が小さい状態を保っています。シャッターが開いて光が当たると、フォトダイオードは当たった光の強さに応じた電荷を発生し、蓄積していきます。次にシャッターが閉じると、電荷を蓄積している部分に隣接している部分の電荷を低くすることで、蓄積した電荷を移動させます。このような動作を繰り返すことで、CCDは電荷をアンプまで転送し、増幅して電気信号へと変換していくのです。

■ CMOSの特長とこれから

 さて、一方のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor 相補性金属酸化膜半導体)も、フォトダイオードとアンプで電荷を電気信号に変換するという仕組み自体はCCDと同じです。「CMOS」自体は半導体の構成・構造を指す言葉で、メモリなどさまざまな分野でも用いられています。デジカメなどに用いられるものは、正式には「CMOSイメージセンサ」と呼ばれるデバイスです。

 CMOSイメージセンサは、フォトダイオード1個につきアンプ1個が対をなす構造となっています。これがCCDイメージセンサとの最大の相違点です。各素子からの電荷は、あらかじめアンプによって増幅された状態で画像処理部分へ転送されるので、転送の過程でノイズの影響を受けにくくなります。

 CMOSイメージセンサの最大の特徴は、「システム・オン・チップ」化が可能な点にあります。簡単に言うと、パソコン用のチップセットなどと同じような製造プロセスで作れるため、フォトダイオードだけではなく、信号を増幅するアンプや転送用の回路など、撮像のために用いるさまざまな仕組みを、1個の半導体の中に作り込んでしまえるのです。
 ワンチップ化できるということは、ある程度の量産規模になれば製造コストが大幅に低減できますから、コスト面では有利となります。処理系がワンチップに収まるため消費電力の面でも有利ですし、製造プロセスの微細化が進むにつれて読み出し/転送速度も高速化しやすくなりますから、短時間で大量のデータを処理しなければならない高解像度撮影においては、以前からCCDより有利ではないか? とも言われていました。
 

 

数年前まで、CMOSを用いたデジタルイメージングデバイスに「安かろう悪かろう」的な印象が抱かれがちだったのは、デバイスメーカーが開発の主軸をCCDに置いていたことと、それによってCMOSイメージセンサに期待される役回りが限定されてしまっていたことがおもな理由です。
 しかし、半導体としてのCMOS自体はさまざまな分野で用いられていることで、その進化の速度は非常に速いものがあります。つまり、他の用途のCMOSに用いられた新規技術がどんどんとCMOSイメージセンサにも応用されてきたのです。
 また、システムオンチップであることから、さまざまな新機軸の取り込みにも柔軟に対応できます。たとえばシャープの「距離画像CMOSセンサ」は、イメージセンサ自体に被写体までの距離を測定する機能を統合したもので、画像認識による各種のシステムへの応用が見込まれています。

 CMOSイメージセンサが高性能化してきた背景には、このような事情があったのです。そう遠くないうちに、「キレイな画像を撮りたいならCMOSに限る!」という風潮が常識化するのでしょうか? それともCCDが巻き返すのでしょうか? などという点に注目しながら、新製品をウォッチするのもオツなものかもしれません。


著者プロフィール:松田勇治(マツダユウジ)
1964年東京都出身。青山学院大学法学部卒業。在学中よりフリーランスライター/エディターとして活動。
卒業後、雑誌編集部勤務を経て独立。
現在はMotorFan illustrated誌、日経デジタルARENAなどに執筆。
著書/共著書/編集協力書
「手にとるようにWindows用語がわかる本」「手にとるようにパソコン用語がわかる本 2004年版」(かんき出版)
「記録型DVD完全マスター2003」「買う!録る!楽しむ!HDD&DVDレコーダー」「PC自作の鉄則!2005」(日経BP社)
「図解雑学・量子コンピュータ」(ナツメ社)など

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