テクの雑学

第85回 つつくと動く、機械のふしぎ −タッチパネルのさまざまなしくみ−

過去の記事を整理・一部リライトして再掲載したものです。 古い技術情報や、 現在、TDKで扱っていない製品情報なども含まれています。

金融機関のATMや切符の自動販売機などで広く使われているタッチパネル。最近は、携帯用ゲーム機にも採用され、ますます身近になっています。画面上を触るだけでさまざまな仕掛けが動くタッチパネルは、どのような仕組みになっているのでしょうか。今回のテクの雑学では、タッチパネルの仕組みを紹介しましょう。

タッチパネルではどのような処理が行われているのか

タッチパネルとは、液晶やCRTなどのコンピュータディスプレイの表面に直接触れることで、コンピュータを操作する入力装置です。キーボードやマウスを使った入力と異なり、画面上に表示されたボタンやソフトウェアキーボードを直接触って入力できるため、コンピュータに不慣れな人でも操作が直感的で分かりやすいのが特徴です。

 とはいっても画面に表示される「ボタン」は、そのまま機械的なスイッチとして作動するわけではありません。その時に画面上に表示されているボタンの位置と、パネル上のタッチされた位置の座標を照らし合わせて、ボタンが押されたかどうかを判定しているのです。アプリケーションソフトは、画面上の座標を入力することで動作するようにプログラムが組まれています。


 つまり、タッチパネルとは、「どこに触ったのか」という位置情報を検知してコンピュータに送信する、入力デバイスの一種なのです。位置情報を検知する方式はさまざまなものがあります。代表的なものを見ていきましょう。

■ 用途の広いアナログ抵抗膜方式

 画面の表面に、透明な電極を2枚使用したタッチパネルを用いる方式です。電極には、酸化インジウムスズ(ITO)の薄膜フィルムが用いられます。

 


 基材となるガラス面の上には電極フィルムが2枚重ねて張り合わされています。電極フィルムの間に小さな絶縁体(ドットスペーサ)を配置することで、フィルムとフィルムの間に隙間を空けます。また、上下の電極フィルムの両端には、電極が接続されています。

 何も触れていない状態では、フィルムの間に空間があるので、電流は流れませんが、パネルにタッチすることで上下の電極フィルムが触れあい、電流が流れます。接触した位置によって、上下のフィルムそれぞれに接続されている電極にかかる電圧が変わります。つまり、この電圧を測定することで、接触した位置からパネル各辺までの距離が求められ、タッチした位置の座標が分かる仕組みです。

 タッチパネルに圧力を加えるだけで電流が流れるので、専用のペンなどが不要で、幅広い用途に使えるのが特徴です。この仕組みを利用して、TDKでは、昨年10月に開催されたCEATEC JAPAN 2007で、塗布型ITOフィルムを使った42インチタッチパネルによる「デジタル書道」のデモンストレーションを行いました。

CEATEC JAPAN 2007 、TDKブース

 

■ タッチパッドにも使われる静電容量方式

 タッチパネル表面全体に電気信号を受ける物質を塗布しておきます。指がタッチパネルに近づく時に、人体とパネルの間に放電現象が発生します。扉のノブに触れるときにピリッと静電気が来る現象と利用している原理は同じですが、もちろん発生する電流はずっと小さなもので、人体に影響はありません。

 放電現象が発生する時に、タッチパネル表面の電荷が変化します。これをセンサで検知することで、タッチした位置を特定します。タッチパネルだけではなく、ノートパソコンのタッチパッドにもよく使われている方式です。
 

■ 専用ペンで誤動作の少ない電磁誘導方式

 磁界が変化することで電流が発生する「電磁誘導」という現象を利用した方式です。具体的には、パネル側にコイルを配置しておき、磁界を発生する専用ペンでタッチすることで発生する電流により、その位置を検知します。ペンタブレットで多く用いられている方式です。

 専用ペン以外には反応しないので誤作動が少ない、パネルに直接タッチしなくても動作するため、画面の裏側に設置して利用できるという特徴があります。
 

■ 画面が明るい赤外線遮光方式

 画面上に格子状に見えない赤外線の格子を形成し、赤外線が遮られた位置のX座標とY座標を測定することで、位置を検知する仕組みです。
 

 アナログ抵抗膜方式や静電容量方式と異なり、ディスプレイ画面表面にパネルを貼り付ける必要がなく、直接画面が見られるのが特徴ですが、赤外線ビームを感知する必要があるため、光があたるところでは使いづらいという欠点もあります。

■ 画面がそのまま入力装置になる、光センサ方式

 ディスプレイ画像を表示するためのセルに、光センサ回路を組み込んだ仕組みです。


 ディスプレイの構成画素には、各色の発光を制御するための回路が設けられています。ここに、光を検出する回路を設けることで、画面全体が微小な光センサの集まりとして機能します。タッチによって光が遮られた素子の座標から、タッチ位置を特定します。まさに、画面そのものが表示画面であると同時に入力装置としても機能する仕組みです。

 他の方式に比べて、薄く軽く作れるという特徴がありますが、外からの光を遮ることで位置を検知するため、真っ暗なところでは使えないという欠点もあります。

■ 普通のモニターもタッチパネルになる!

 光センサ方式以外の方式では、画面の表面に設置したタッチパネルシートや赤外線格子により位置を検出する仕組みになっています。つまり、通常のモニターにそれらの装置を後からつけることで、タッチパネルとして利用できるようになります。会議室や教室などに設置するパソコンの大型モニターをタッチパネル化するシートと専用ソフトウェアがすでに製品化されています。

 キーボードによるコマンド入力からマウスなどのポインティングデバイスによる操作、そしてタッチパネルによる操作へと、コンピュータの操作はどんどん直感的に進化してきました。すべての人がコンピュータとかかわる日常生活の中で、タッチパネルは人とコンピュータの間を橋渡しする「人に優しいデバイス」として、大きな役割を果たしています。


著者プロフィール:板垣朝子(イタガキアサコ)
1966年大阪府出身。京都大学理学部卒業。独立系SIベンダーに6年間勤務の後、フリーランス。インターネットを中心としたIT系を専門分野として、執筆・Webプロデュース・コンサルティングなどを手がける
著書/共著書
「WindowsとMacintoshを一緒に使う本」 「HTMLレイアウトスタイル辞典」(ともに秀和システム)
「誰でも成功するインターネット導入法—今から始める企業のためのITソリューション20事例 」(リックテレコム)など

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