テクの雑学

第181回 ガスでお湯と電気をいっしょに作る、エネファームの仕組み

過去の記事を整理・一部リライトして再掲載したものです。 古い技術情報や、 現在、TDKで扱っていない製品情報なども含まれています。

東日本大震災以来、電力の不足が懸念される中、電力会社に頼らず家庭で電気を作るシステムに注目が集まっています。今回のテクの雑学では、ガスで電気をつくる「エネファーム」の仕組みについてみていきましょう。

ガスのエネルギーを「電気」と「熱」に変える

「エネファーム」は、家庭用燃料電池コジェネレーション・システムの愛称です。名前の由来は、“ENErgy”+“FARM”(農場、畑)からきており、エネルギーを作り出すという意味があります。特定の製品名のようですが、2008年に燃料電池実用化推進協議会が、家庭向け燃料電池の認知向上を推進する取り組みとして決めた統一名称なので、ガス会社など、販売を推進している会社のほとんどが「エネファーム」という名称を使っています。

 コジェネレーション(cogeneration)は、燃料から電気を取り出すだけでなく、その時に発生する排熱もいっしょに取り出すシステムで、英語では“combined heat and power”とも言われます。熱を空気中に放熱せず、お湯を沸かすための熱源として利用することで、エネルギー効率を高めるものです。

 エネファームでは、ガスや灯油などの燃料のエネルギーを電気と熱に変えます。具体的には、燃料から水素を取りだし、その水素を燃料電池に供給して発電し、排熱でお湯を沸かします。発電所で使用している従来の汽水型火力発電では、使用するエネルギーのうち電気として取り出される割合は37%なのに対し、エネファームでは電気とお湯を合わせて81%に上っています。



■ メタンから水素を取り出す

 燃料となる都市ガスから水素を取り出すには、まず硫黄分を取り除いた後、主成分のメタンと水蒸気を高温で反応させ、水素と一酸化炭素を発生させる「水蒸気改質」という反応を起こします。ここで発生した一酸化炭素をさらに水蒸気と反応させて、水素と二酸化炭素を発生させる「水性シフト反応」が発生し、最終的に都市ガスは水素と二酸化炭素の混合気体に変わります。


 水蒸気改質によって発生する一酸化炭素が燃料電池に送り込まれると、電極に付着して性能低下の原因となります。そのため、各社では、一酸化炭素を効率的に取り除くための触媒の開発に力を入れています。

 

■ 水素と酸素の反応で水と電気を作る

 水に電解質を加えて電流を流すことで水素と酸素が発生する「電気分解」はよく知られていますが、燃料電池はその逆に、水素と酸素から水が発生する時に電気が発生する反応です。燃料電池は、電極と電解質の種類によって分類されますが、エネファームで使用されているのはPEFC(固体高分子型燃料電池)というタイプです。

 

【 参考情報 】

■テクの雑学 第19回 排気ガスは無害な水蒸気 —燃料電池で発電する仕組み—


 発電時に放出された熱を使って、貯水タンクから取り出した水をあたため、お湯を沸かします。このお湯を給湯や暖房に利用することで、従来は湯沸かしや暖房に使用していたガス・電気を節約します。


 ガスを燃料にして家庭用の発電と給湯を同時に行うシステムとしては、「エコウィル」も注目されています。エネファームが天然ガスから取り出した水素を使って燃料電池で発電するのに対し、エコフィルは、超小型のガスエンジンを回して発電し、ガスを燃やした時の熱でお湯を沸かします。エネファームに比べると、燃料となるガスを直接燃焼するので、さらにエネルギー効率がよくなり、最新のシステムでは92%にも上ります。

■ 話題のGTCCもコジェネレーション

 家庭で発電できるので、いざという時の電源として使えるように思えますが、現在のエネファームやエコウィルは、停電時には発電することはできません。触媒の加熱や、燃料電池に水素を送るポンプなどに商用電源を使っているためです。昨年の東日本大震災の後行われた計画停電の時には、「高いお金をかけて導入しても肝心な時に使えない」という利用者の不満の声がきかれました。東京ガスや大阪ガスなどでは、蓄電池を併設して停電時にも発電できる機種の開発を進めています。

 また、もう一つの注意点として、お湯を作りながら発電するので「お湯が満タンになってしまうと発電が止まってしまう」ということがあります。そのためお湯の使用量が少なくなる夏には発電量も少なくなる傾向があります。ガス会社では、夏の昼間に発電量が多くなる太陽光発電とエネファームを組み合わせる「ダブル発電」を勧めています。

 コジェネレーションは、今まで「熱」として捨てられていたエネルギーを有効に活用します。原子力発電に代わって電力会社の発電を担う、最新の火力発電所で活用されているGTCC(ガスタービン・コンバインドサイクル)もコジェネレーションの一種です。最新式のシステムのエネルギー利用効率は55〜60%程度と、従来の汽水型火力発電よりも格段に高くなっています。
 

【 参考情報 】

■テクの雑学 第164回 燃料に石油要らず!発電効率も高い!
 〜意外とエコな火力発電「ガスタービン・コンバインドサイクル」方式〜


 大規模な複合商業施設やマンションなどでも、GTCCを導入して施設全体の電気と給湯の一部をまかなう動きがあります。一般住宅にも、徐々に、熱を活かすコジェネレーションの導入が進むと予想されます。


著者プロフィール:板垣朝子(イタガキアサコ)
1966年大阪府出身。京都大学理学部卒業。独立系SIベンダーに6年間勤務の後、フリーランス。インターネットを中心としたIT系を専門分野として、執筆・Webプロデュース・コンサルティングなどを手がける
著書/共著書
「WindowsとMacintoshを一緒に使う本」 「HTMLレイアウトスタイル辞典」(ともに秀和システム)
「誰でも成功するインターネット導入法—今から始める企業のためのITソリューション20事例 」(リックテレコム)など

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