パワーエレクトロニクス・ワールド

第2回 スイッチング電源とは?その仕組み電源革命の歴史

過去の記事を整理・一部リライトして再掲載したものです。 古い技術情報や、 現在、TDKで扱っていない製品情報なども含まれています。

ICやマイコン搭載の電子機器には、電圧変動の少ない安定化した直流が必要です。安定化電源にはリニア電源とスイッチング電源の2方式があります。従来のリニア電源の限界をブレイクスルーして、画期的な小型化・軽量化・高効率化を実現したのがスイッチング電源。スイッチング電源にはパワーソリューションの技術エッセンスが凝縮されています。

リニア方式のACアダプタが重くかさばる理由

電源の基本技術を知るために好適なのは、商用交流を直流に変換するACアダプタです。かつてACアダプタといえば、ズシリと重いというのが通例でしたが、現在では携帯電話の充電器のように、ずいぶん軽くコンパクトなものに代わっています。これは2000年頃から従来のリニア方式にかわり、スイッチング方式のものが主流になってきたからです。
リニア方式やスイッチング方式の違いについては後述するとして、まずは従来型の簡易なACアダプタ(安定化回路を省いた簡易なリニア電源)について説明します。このタイプのACアダプタは回路が簡単で低価格なのが特長で、コードレス電話機やデスクトップパソコンのスピーカ、電動工具などに用いられています。外観からはわかりませんが、その重量と体積の大半は、鉄心にコイルを巻いた電源トランスによるものです。この電源トランスで100Vの交流電圧を交流の低電圧に変換、続いて順方向の電流は流し、逆方向の電流を流さないダイオードの性質を利用して交流を整流します。
ただ、整流したとはいっても、まだ直流には程遠い脈流なので、コンデンサを用いた平滑回路でなだらかにします。電荷を蓄えるというのがコンデンサの基本性質の1つです。図に示す整流回路はブリッジ形のダイオードを用いた例で(全波整流方式)、交流電流の向きが切り替わっても、コンデンサにはつねに同じ向きの電流が流れて電荷を蓄えるようになっています。脈流は周期的に電流の増減が繰り返されて電圧変動が大きいので、コンデンサは蓄えた電荷を放出して電圧変動を抑えます。これが平滑回路の役割で、平滑用コンデンサには大容量のものが必要なため、一般にアルミ電解コンデンサが使われます。平滑回路にはコンデンサとともにチョークコイルが回路に直列に用いられることもあります。電流変化を妨げようとするコイルの性質を利用したもので、より平滑化が図れます。

デジタル化した電子機器にとって重要なのは“直流安定化電源”

商用交流から直流を得るのが、ACアダプタをはじめとするAC-DCパワーサプライの基本です。しかし、一口に直流とはいっても、その品質にはピンからキリまであります。前述のACアダプタのような簡易な回路では、脈流を平滑しても、まださざ波のようなリップルが残っています。また、商用交流の電圧変動によっても、出力の直流電圧は変動します。このような変動はバッテリへの充電などにはさほど問題はなくても、低電圧駆動するICなどでは誤動作の原因となるので、より平坦で安定した直流が必要です。そのための安定化回路(レギュレータ)を備えた電源を安定化電源といいます。
安定化電源は方式の違いにより、リニア電源とスイッチング電源に大別されます。リニア電源とは真空管時代から使われてきた方式です。原理はすこぶる簡単で、回路に可変抵抗を組み込むことにより出力電圧を調整するというもの。その調整役として使われるのが、ツェナーダイオードや三端子IC(三端子レギュレータ)という素子です。
ツェナーダイオードは定電圧ダイオードとも呼ばれます。一般のダイオードは一定方向に電流を流し、逆方向の電流を流さない整流素子として使われます。しかし、ダイオードに逆方向の加える電圧を高めていくと、ついには耐えきれずいきなり電流を流すようになります。この現象を利用したのがツェナーダイオードで、ある電圧を境に電流が流れる定電圧ダイオードとして機能するので、これによって出力電圧の一定化が図れます。
三端子ICというのは、ツェナーダイオードによる定電圧(基準電圧)と出力電圧の誤差を検知し、これをトランジスタで増幅・補正することで電圧の安定化を図る素子です。回路全体が1チップ化され、IN・OUT・GND(グランド)の3つの端子をもつので3端子ICと呼ばれます。3端子ICは小型で使い勝手にすぐれるので電子機器に多用されてきました。しかし、発熱ロスが大きいため、放熱のためのヒートシンク(放熱板)が必要になります。このため大出力の電源には不向きですが、回路が簡単かつノイズが少ないという長所をもつため、計測器や医療用機器、高級オーディオ機器などに用いられます。

電源の小型化・軽量化・高効率化を推進するスイッチング電源

さて、いよいよスイッチング電源の説明に移ります。最も身近なスイッチング方式の電源は、携帯電話のACアダプタです。回路は前掲の簡易型ACアダプタよりも格段に複雑ですが、安定化回路のIC化により、きわめてコンパクトになっています。また、簡易型ACアダプタのように大きく重い電源トランスが搭載されていないことも、小型・軽量化に大きく貢献しています。
スイッチング電源には過去のパワーエレクトロニクスの技術エッセンスが凝縮されています。1960年頃から真空管は半導体素子(ダイオードやトランジスタなど)にかわっていきましたが、電源の小型化や効率化はそれほど進みませんでした。これはリニア方式の電源の宿命です。トランジスタの放熱のためにヒートシンクが必要であり、また電源トランスは依然として重くかさばっていたからです。
リニア電源と全く異なる方式により、この問題を解決したのがスイッチング電源です(NASAのアポロ計画により開発推進)。両方式の第1の違いは、リニア電源ではトランスで商用交流を電圧変換してから整流するのに対して、スイッチング電源では商用交流をまず直流に整流してから電圧変換するところにあります。しかし、整流されてしまうとトランスで変換できません。そこで、スイッチング電源では整流された電流を半導体素子(トランジスタやMOS FET)の高速スイッチングによりパルス波の交流に変換し、これを高周波トランスに送り込みます。当然ながら回路は複雑になり部品点数も増えます。ではなぜ、このようなややこしいことをするのかが、スイッチング電源のキーポイントです。
スイッチング電源の制御方式には各種ありますが、最も代表的なのはPWM(パルス幅変調)という方式です。パルス波の幅(スイッチングON/OFFサイクルのONの時間)を調整して、各パルスの面積を同じにすることで、電圧の安定化を図る方式です。効率の面でいえば、リニア電源は電力の一部をたえず熱として切り捨てて安定化を図るため、どうしても低効率ですが、スイッチング電源はいわば電力を切り貼りするかのように無駄なく出力するので、きわめて高効率となります。
また、トランスの大きさは周波数に反比例します。交流周波数は50Hz/60Hzと低いのでリニア電源のトランスは、どうしても重く大きくなりますが、スイッチング電源のパルスの周波数は数10kHz〜数100kHzの高周波なので、トランスも小型・軽量なものですみます。ただし、高周波となるとトランスコアとして鉄心は損失が大きくなって使えません。そこで、不可欠となるのがフェライトコアです。電源の効率がわずか1%アップしただけでも社会全体では多大な省エネ効果が得られます。パワーエレクトロニクスの世界で、TDKのフェライト技術に大きな期待が寄せられているのもこのためです。とはいえスイッチング電源にも弱点があります。それは高速スイッチングによるノイズの発生です。電源は熱との戦いといわれてきましたが、スイッチング電源が登場してからはノイズとの戦いが加わりました。ここにもTDKの技術が大いに活躍しています。

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