2019.12.20

TDK Front Line

Vol.10 社会インフラを⽀えるフラッシュストレージ

現代社会に欠かせない高性能ストレージ技術

1987年、電源を切ってもデータが保存される画期的な不揮発性の半導体メモリとして、*NAND型フラッシュメモリが⽇本で開発されました。

フラッシュメモリとは、カメラのフラッシュのように、データを⼀瞬にして消去できることからのネーミングです。この フラッシュメモリを記憶装置として利⽤したのが各種フラッシュストレージです。USBメモリやSDメモリカードなども、広い意味でのフラッシュストレージの一種で、簡便なリムーバブルメディアとして、パソコンやモバイル機器などで多用されています。

フラッシュストレージは フラッシュメモリとデータの読み書きや消去を制御するメモリコントローラICによって構成されます。⾼速アクセスに加えて、メカニックな駆動機構をもたないため耐衝撃性にも優れ、HDD(ハードディスクドライブ)からの置き換えを意図したものは、特にSSD(ソリッドステートドライブ)と呼ばれています。SSDは工作機械、自動改札機、自動券売機、ATM、防犯カメラ、画像診断装置など、産業機器の分野でいち早く利⽤され、その後、パソコンのHDDとの代替も進⾏しました。昨今ではポータブルな外付けSSDの利⽤も増加しています。

*NAND型 フラッシュメモリ: フラッシュメモリにはNOR型とNAND型があり、大容量のデータストレージして利用されるのはNAND型です。

“多値化技術”や“3D NAND技術”により、フラッシュメモリの記憶容量は⾶躍的に増⼤

フラッシュメモリはMOS-FET*のゲートの上に浮遊ゲートと制御ゲートを設けた構造となっています。メモリセル(記憶素⼦)にデータが書かれているか否かは、浮遊ゲートに蓄えられた電荷量で判断されます。


*MOS-FET:金属酸化物半導体(MOS)電界効果トランジスタ(FET)。信号の増幅やスイッチング機能をもつトランジスタの一種で、消費電力が少なく、高集積化しやすいため、ICやLSIの主流として採用されています。

制御ゲートに電圧を加えると、浮遊ゲートに電荷が蓄えられ(書き込み動作)、シリコン基板に電圧を加えると、蓄えられた電荷が放出されます(消去動作)。

浮遊ゲートに蓄えられた電荷量が少ないとき、ソース-ドレイン間の抵抗は小さく、低いゲート電圧でも電流が流れ、電荷量が多くなるにつれ、電流を流すために必要なゲート電圧は高くなります。このゲート電圧(しきい値電圧)の違いで、0か1かのビット信号を読み出します。
 

従来、フラッシュストレージはHDDと⽐べて、容量単価が⾼いのが難点とされてきました。また、配線幅の微細化による⼤容量化も技術的に限界に近づいていました。しかし、この問題は多値化技術や3D NANDフラッシュメモリ技術によりクリアされました。

メモリセルのしきい値電圧が、ハイかローかの1ビット(2レベル)で表すタイプを2値NANDあるいはSLCといい、しきい値電圧を多段階にすることで⼤容量化を図ったタイプを多値NANDといいます。2005年頃から フラッシュメモリの低価格化が急速に進展したのは多値NANDの採⽤によるものです。2ビット(4レベル)のMLCに続いて、3ビット(8レベル)のTLC、4ビット(16レベル)のQLCも製品化されました。
 

また、3D NANDフラッシュメモリは、2015年前後から実⽤化された革新的な技術です。従来、シリコンチップ表⾯に2次元(2D)配列してきたメモリセルを、垂直⽅向に数⼗層あるいは百層以上も積み上げることで⼤幅な⼤容量化を可能にします。容量が100TBのSSDも製品化されていて、多値化技術との組みあわせにより、さらなる⼤容量化も期待されています。
 

フラッシュストレージの寿命に関わるメモリコントローラ ICの性能

SSDをはじめとするフラッシュストレージは、社会インフラを支える高性能ストレージとして、身の回りのさまざまな分野で活躍しています。⼀般にこうした産業機器⽤フラッシュストレージは、⺠⽣機器⽤よりもはるかに頻繁な書き換えが繰り返される⽤途に向けて設計されています。その信頼性や寿命に⼤きく関わるのは、メモリコントローラICの性能です。

フラッシュメモリへの読み書きは、複数のメモリセルからなるブロックという単位で⾏われます。このため、特定のブロックに集中的に読み書きが繰り返されると、回復不能な不良ブロックとなりエラーを起こしてしまいます。特定ブロックに読み書きが集中しないように分散化を図る技術をウェアレベリングといい、その性能はメモリコントローラICに搭載されたアルゴリズムによって左右されます。

独⾃開発のアルゴリズムによるスタティック・ウェアレベリング

独⾃開発のアルゴリズムによるきめ細かな制御⽅式を採⽤し、産業⽤途を中⼼に数多くの出荷実績を誇るのがTDKのNAND型フラッシュメモリ⽤コントローラIC“GBDriver(ギガバイトドライバ)”です。

たとえば、⼀般的なSSDは複数のフラッシュメモリチップを搭載することで⼤容量化を図っています。TDKのGBDriverは、個々のメモリチップ内における分散化ととともに、複数のメモリチップにわたる全メモリ領域で分散化するスタティック・ウェアレベリング⽅式“TDK Smart Swap”を採⽤して、書き換え回数を⾶躍的に向上させていることが⼤きな特⻑です。
GBDriverを搭載したTDKのフラッシュストレージが、産業界から⾼く評価されているのも、この優れた分散化技術によるものです。

超高速・大容量、多数同時接続、超低遅延を特長とする5G通信の基地局用としても、フラッシュストレージは欠かせません。このように、産業分野でのフラッシュストレージの活⽤は、さまざまなメリットをもたらしますが、重要なのは⻑期にわたる耐久性と信頼性です。GBDriverを搭載したTDKのフラッシュストレージ(各種産業⽤SSD、産業⽤コンパクトフラッシュカード、産業⽤CFastなど)の優れたパフォーマンスは、産業機器や社会インフラの⾼度化を⽀え、未来を見据えたさらなる発展に繋げます。

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