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テクの雑学

第146回 ますます省エネ効果を発揮するエアコンの「冷房」「除湿」の仕組み

エアコンの省エネ性能から生まれた再熱除湿
 ただし、「冷房」である以上、状況によっては除湿が不可能な場合もあります。たとえば梅雨時などの低温高湿状態で除湿しようとしても、室温設定が外気温より高い状態では冷房運転そのものができません。つまり冬場の暖房運転時には除湿できないので、窓ガラスや壁などの結露を防ぐといった用途には使えなかったわけです。


 これに対して、室温をあまり下げずに湿度を下げる機能は「再熱除湿」と呼ばれています。再熱除湿機能が生まれたのは、市場の要望だけではなく、実はエアコンの省エネ性能向上に伴う問題解決のためでもありました。背景にあるのは、性能向上のために進められたインバータの採用です。

 エアコンは、コンプレッサを使って冷媒を圧縮→液化させ、また逆に膨張→気化させることで、それに伴う温度の変化を利用して室内の気温をコントロールする機械です。作動原理上、蒸発器内部の圧力が低いほど冷媒は膨張しやすく、つまり気化しやすくなって、低温でも周囲からの熱を奪いやすくなります。逆に凝縮器側は圧力が高いほど、そこに蓄えられる熱量が大きくなります。言葉を換えると、蒸発器と凝縮器の温度差が大きいほど運転の効率が高まります。
 そこに一石を投じたのがインバータの搭載です。モータの回転数を自在に、かつ微細に制御できるようになったことで、昔のエアコンに比べて蒸発器と凝縮器の温度差が小さい状態でも効率よく冷房できるようになりました。単純な冷房能力は低下する場合もありますが、その分を補うために必要な電力が圧倒的に少なくて済むので、結果的に省エネにつながります。エアコンが省エネ性能を飛躍的に高めた理由は、このインバータ採用とコンプレッサの高効率化によるところが大なのです。

 しかし、この状態では蒸発器周辺の空気の温度と冷媒の温度差が小さくなるため、結露を起こさせる力が弱まって除湿性能が低下してしまいます。そこで基本的には冷房運転を行いながら、冷気に暖気を混ぜることで適切な温度に調整した空気を室内に送り込むのが再熱除湿運転です。

 再熱除湿機能が登場してしばらくの間、「省エネタイプのエアコンを買ったのに、電気代が高くなった……」といった声が聞かれることがありました。当時は省エネ性能を示す指標が冷暖房平均COP(Coefficient of Performance:エネルギー消費効率)で、消費電力1kWあたりの冷房能力と暖房能力の平均値を示すものでした。つまり、除湿運転がどの程度の電力を消費するのか判断できなかったわけです。2007年度からは性能指標にAPF(Annual Performance Factor:通年エネルギー消費効率)を用いるようになり、インバータ搭載機の省エネ性能が発揮されやすくなりましたが、やはり除湿運転に関する項目は設けられていません。

 加えて言うなら、暖気を得るために専用のヒーターを使うものがあったことや、弱冷房除湿とは違ってコンプレッサや室内機のファンが高負荷状態で運転される時間が増えたことも、電気代が高くなったと感じる原因だったと推測されます。しかし最近の機種は機構的な工夫によって暖気を得るので、省エネ性能に与える影響はぐっと少なくなりました。たとえば、凝縮器から高温高圧状態の液体を少しだけ蒸発器側(再燃器)に送ることで、蒸発器周囲の気温を調整するといった仕組みが用いられています。また、冬場には屋外の乾燥した空気と混合して室内へ送る「給気除湿」機能によってガラスや壁の結露を防ぐ機種もあります。

進化するセンサ機能でモニタリング


 さて、よく話題になるのが、「除湿と冷房、どっちが電気代の節約につながる?」という疑問です。少し前なら一般論として「弱冷房除湿が最も電気代がかからない」と言えましたし、現在の話でも、機能が限定されている最廉価帯の機種なら「真夏の高温多湿状態では冷房運転で設定温度を高めにしておくのが良い。再熱除湿運転は梅雨時など低温多湿の状態で……」と言ってかまわないと思います。

 なんとも困ってしまうのが中級以上の多機能機種です。メーカーや機種によって運転モードの呼称がまちまちで、単に「除湿」とされている運転モードが実は再熱除湿だったり、「衣類乾燥」など複数の除湿モードを持つものもあるので、明確な指針を提示することが難しいのです。

 ただし、最新の中級機種以上であれば、センサなどで室内の状況を検出し、自動的に最適な運転モードを使い分けたり、風向きを調整することで効率よく冷暖房を行うといった機能を備えているはずです。そのような機種ならば、「自動」モードにしておけば、日中は冷房と弱冷房除湿の使い分け、夜間は再熱除湿といった具合に、状況に応じて最適な効率の運転を行ってくれると考えていいでしょう。

 昨年あたりからは、電力消費量を直接表示する機種も増えています。中には電気使用量を任意に設定し、その量に近付いたら知らせてくれたり、外気温が下がってきたら運転停止を推奨するといった機能を搭載しているものもあります。
 これからエアコンを購入するなら、「省エネ基準達成率・エネルギー消費効率」に加えて、その省エネ性能をより良く発揮するための機能にも注目してください。エアコンは一度購入したら長年に渡って使い続けるものです。また、家庭で消費する電力の約25%がエアコンによるものとも言われます。上手に省エネできる機能を搭載した機種なら、購入時の支出は少々多くても、数年間の使用で差額分が償却できてしまうことも少なくありませんから、カタログ等でじっくりと調べていただきたいところです。

※「東京地区・木造家屋・南向き、洋室。暖房期間10月28日〜4月14日・冷房期間6月2日〜9月21日、6:00〜24:00の18時間使用。外気温度が16度以下で暖房、24度以上で冷房」という条件で必要となる能力の総合計を、そのエアコンが期間中に実際に消費する電力量で割った数値。COPがモータ回転数一定の性能を中心とした指標なのに対し、モータの回転数変動が大きいインバータ機の実際の性能に近い指標となる。


著者プロフィール:松田勇治(マツダユウジ)
1964年東京都出身。青山学院大学法学部卒業。在学中よりフリーランスライター/エディターとして活動。
卒業後、雑誌編集部勤務を経て独立。
現在はMotorFan illustrated誌、日経トレンディネットなどに執筆。
著書/共著書/編集協力書
「手にとるようにWindows用語がわかる本」「手にとるようにパソコン用語がわかる本 2004年版」(かんき出版)
「記録型DVD完全マスター2003」「買う!録る!楽しむ!HDD&DVDレコーダー」「PC自作の鉄則!2005」(日経BP社)
「図解雑学・量子コンピュータ」「最新!自動車エンジン技術がわかる本」(ナツメ社)など


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