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第160回 大規模に本格化してきた、リニアモーターカーをみてみよう!

メリットの多い鉄道式リニア


 地下鉄にリニアモーターの採用が進んだ理由は、大きく2つがあげられます。まず、工費の節約です。リニアモーターは回転型モーターに対して天地方向の大きさがコンパクトにできるので、車体の高さを低く抑えることができます。具体的には、回転式モーターでは1,100mm程度だった路面からの床面高さを、約700mmにまで抑えました。このことによって、トンネルの断面積を通常型地下鉄の約半分程度まで小さくすることができます。
 したがって、トンネルがコンパクトで済むので、工事で掘り出さなければならない土砂の量も、それを運搬する回数も減らせますし、さらに工期短縮による人件費の節減など、経済面で大きなメリットが得られるわけです。


 次に、性能面のメリットがあげられます。特に急勾配と急カーブへの対応は、リニアメトロの強みを生かせるところです。従来型の鉄道車両は、車輪とレールの接触面の摩擦によって推進力を得ています。そのため、いくらモーターを強力にしても、摩擦の限界を超えてしまうと車輪が空転するだけなので、登坂性能に限界があったのです。一般的に、その限界は3%勾配(100m進む間に3m高くなる)程度と言われていました。しかし、リニアメトロの車輪は車体の重さを支えているだけで、レールとの摩擦は推進力にほとんど影響しません。さらに、誘導式リニアモーターはリアクションプレートが1次側をレール側に引き付けるように作用するため、この点でも登坂性能の向上に貢献し、能力的には8%の勾配でも対応可能とされています。

 都営大江戸線の場合、建設基準上の最急勾配は55‰(‰:パーミル、1km進む間に55m高くなる)で、従来の基準だった35‰を大幅に上回っています。ちなみに、実際の最急勾配区間は都庁前駅−西新宿五丁目駅間などの50‰です。

エコでコストパフォーマンスに優れる
 リニアモーターの採用によって、台車に車輪駆動用の軸やギアなどの部品が不要となったことを利用し、新しい仕組みを導入して、カーブの最小半径を小さくすることにも成功しています。具体的には、左右の車輪の回転差を許容する構造や、カーブの曲率に合わせて前側の車輪と後ろ側の車輪が別の方向を向く「セルフ・ステアリングシステム」が採用されました。これらによって、路線上の最小回転半径がR50(カーブの曲率が半径50m)まで対応可能とされています。路線形状の自由度が高まるため、地下においてもさまざまな構造物が設置されている都市部では、新規路線の計画が進めやすくなるわけです。都営大江戸線の場合も、従来型車両の建設基準であったR160からR100へと小さく設定できました。ちなみにR100が設定されている区間は、大門駅−赤羽橋駅と六本木駅−青山一丁目駅間などです。

 いいことずくめに見えるリニアメトロですが、リニアモーターそのものの構造から、効率が回転型モーターより劣る、つまり消費電力の大きさを指摘されることがあります。リニアモーターは全体が開放された構造なので漏れ磁束が比較的大きく、かつ1次側と2次側の距離が大きいため、磁界の強度を保つために大きな電流(励磁電流)が必要となるので、輸送量あたりの消費電力が増大する、というわけです。

 実際、日本地下鉄協会の資料中でも、リニアメトロの走行電力量を100とした場合、通常の回転式モーターによる鉄輪式車両で車両の世代によって80〜120、「ゆりかもめ」のようなゴムタイヤ式車両では150〜180との試算を提示しています。これについては、駅設備など鉄道システム全体の消費電力や必要とされる資源の量、総工費まで含めたコストなどの視点から考えて、それでもメリットがあると判断される場合にリニアメトロを採用している、ということになります。

 また、従来式の鉄道路線と相互乗り入れが不可能な点が指摘されることがあります。しかし、実際にリニアメトロを採用した路線の多くは、都市部と近郊部において近年人口増加などで需要が増している地域と、他の路線の主要駅の間をつなぐ交通手段として採用されていると判断できます。都市近郊部では、いまさら地上に新規路線を作るわけにもいきませんから、主要駅へのアクセス手段が確保できるのであれば、相互乗り入れにこだわるより、総工費が安く済むリニアメトロを採用するのも納得できるところです。

 ちなみに、都営大江戸線の車両に定期点検などを行う場合、E5000型と呼ばれる専用の電気機関車を使い、汐留連絡線(汐留駅−浅草線大門駅−新橋駅間)を経由して車両基地まで牽引しているそうです。作業は終電後に行われるため、残念ながらその光景を眼にできるタイミングは非常に限られているのですが、最新鋭のリニア車両が電気機関車に牽引されるというのも、なにやら親しみの湧く話ではないでしょうか。

取材協力:東京都交通局

参考情報
浮かせて押して引っ張って…… — 夢と現実の、リニアモーターカー —



著者プロフィール:松田勇治(マツダユウジ)
1964年東京都出身。青山学院大学法学部卒業。在学中よりフリーランスライター/エディターとして活動。
卒業後、雑誌編集部勤務を経て独立。
現在はMotorFan illustrated誌、日経トレンディネットなどに執筆。
著書/共著書/編集協力書
「手にとるようにWindows用語がわかる本」「手にとるようにパソコン用語がわかる本 2004年版」(かんき出版)
「記録型DVD完全マスター2003」「買う!録る!楽しむ!HDD&DVDレコーダー」「PC自作の鉄則!2005」(日経BP社)
「図解雑学・量子コンピュータ」「最新!自動車エンジン技術がわかる本」(ナツメ社)など


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