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第76回「江戸時代の電磁気実験」の巻
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日本の実験電気学の祖 橋本宗吉の科学実験
平賀源内によって日本でも製作できるようになったエレキテル(摩擦起電機)は当初は見世物などで人気を博しましたが、多作されるうちに珍しいものではなくなり、人々の関心は薄れました。このエレキテルを科学実験器具として見直したのは江戸後期の橋本宗吉(1763〜1836。号は曇斎)。彼の『阿蘭陀始制エレキテル究理原(おらんだしせいエレキテルきゅうりげん)』は、日本初の実験電気学の書です(1811年ごろの著作)。もっとも同書に記された実験は彼のオリジナルではなく、オランダのボイスの著書に書かれている実験を、自作装置で追試したものです。しかし、エレキテルは特別なカラクリを必要とせず、ガラス管を紙でこすっただけでエレキテルの気(静電気)が発生すること、また、ガラス以外の多くの物質もエレキテルの気を帯びることなどを、実験を通して明らかにしています。
彼はまたエレキテルの火花で焼酎に火をつけたり、手をつないで輪になった大勢の人を、自作のライデンびん(「百人様(ひゃくにんためし)」と命名)に蓄めた静電気で、いっぺんに感電させて驚かす実験(「百人おどし・百人おびえ」)をしたり、さまざまな科学実験を演じてみせました。今日の科学手品のハシリです。

図1 『阿蘭陀始制エレキテル究理原』(橋本宗吉著)の摩擦電気実験
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