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第81回「超電導磁石と電磁推進船」の巻
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神戸港での航行実験に成功した「YAMATO−1」
磁力を利用した正真正銘の磁石船といえるのが電磁推進船。1960年代のはじめ、電磁ポンプからヒントを得て考案されたといわれます。磁石の磁界により導電性流体を非接触で駆動するのが電磁ポンプで、鉄鋼や合金の鋳造プロセスなどにも応用されています(第80回「ガラスと磁石」の巻で紹介)。その原理はフレミングの左手の法則です。磁界に直交する方向に電流を流すと、磁界と電流の双方に垂直な方向へ力が作用します。電磁推進船はこの力を推進力とするため、スクリューもモータも不要になるのです。
この推進力は電流と磁束密度に比例します。つまり強い磁界を発生させ、大きな電流を流すほど推進力も増します。電磁推進方式の初の模型船は1966年、アメリカのウェスチングハウス社で製作されました。しかし、このときは通常の電磁石が用いられたため、十分な推進力は得られませんでした。
超伝導磁石を利用すれば大きな推進力を得られると考えたのは、神戸商船大学の佐治吉郎教授。1976年に全長1mの世界初の超電導電磁推進船を開発して水槽中での航行実験に成功。1979年には全長3.6mの2号機を開発、基礎研究を積み重ねました。1985年には(財)シップアンドオーシャン財団が超電導電磁推進船開発研究委員会を設置、実用化に向けての研究開発が進められ、1992年には全長30m「YAMATO−1」が開発され、神戸港での海上航行実験にも成功しました。
「YAMATO−1」では6つの超電導コイル(超電導磁石)を束ねた電磁推進装置を2基搭載しています。おのおのの超電導コイルの内部にはプラスチック管が貫通され、その内面には電極が取り付けられています。超電導コイルから磁界を発生させ、電極から電流を流すと、プラスチック管内部の海水に力が作用し、海水はウォータージェット式に船尾から吐き出されて船が推進するというしくみです。現在、「YAMATO−1」は神戸海洋博物館の野外展示物として公開されています。

図1 超電導磁石を用いた電磁推進船の推進原理
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