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第94回「磁気記録の技術史」の巻
-ユビキタス時代の情報ストレージ- |
予測をはるかに超えたハードディスクの高密度記録
1980年代は半導体技術が飛ぶ鳥を落とす勢いで発展した時代です。半導体メモリの価格ダウンにより、コアメモリやワイヤメモリ、磁気バブルメモリといった磁気記憶装置は、次々とコンピュータ市場から姿を消していきました。1980年代はまた半導体レーザの利用が本格化した時代でもあり、磁気記録は21世紀にはすべて光記録にとってかわられるといわれたこともありました。
ところが1990年代にハードディスクは予測を覆す大発展を遂げました。磁性材料と磁気ヘッドの連携的な技術進歩により、驚異の高密度記録を達成していったからです。
数年後には1枚あたり160GB(ギガバイト)のハードディスクが登場するといわれ、TB(テラバイト)時代も目前に迫っています。
HDD(ハードディスクドライブ)の弱点は衝撃に弱いこと。回転するディスク面に磁気ヘッドが接触すると、読み書き不能になってしまうのです。この問題を解決したのがTDKの耐衝撃機構HDD用ヘッド。1000Gの衝撃にも耐えるTDKの新機構の採用により、これからは携帯電話やPDAなどのモバイル機器にもHDDが搭載されるようになるでしょう。
HDDの駆動モータには強力な希土類磁石も応用され、小型化に大きく貢献しています。だれもが、どこでも、いつでもコンピュータを利用するようになるという“ユビキタス社会”に向けて、磁性材料と磁石はますます活躍しそうです。

図2 ワイヤメモリと磁気バブルメモリのしくみ
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